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Be Smart Tokyo 2025年度 DEMO DAY 第②弾 〜観光、モビリティDay〜 開催レポート

February 6, 2026

2026年1月30日、CIC Tokyoおよびオンラインにて、「Be Smart Tokyo 2025年度 成果報告イベント」を開催しました。本イベントは、東京都が主導するスマートサービス実装促進プロジェクト『Be Smart Tokyo』の一環として、スタートアップと事業会社(基盤提供者)が連携し、都民のQOL(生活の質)向上を目指して取り組んできたプロジェクトの成果報告会です。

当日は、「ナイトタイムエコノミーとインバウンドビジネスのポテンシャル」と題したパネルセッションと、今年度CICプログラムに採択された6社と株式会社eiiconが運営するプログラムに採択された4社、計10社による成果報告ピッチが行われました。次世代モビリティと無人ガイドによる観光DX、生成AIを活用したインバウンド接客の完全自動化、数理最適化を用いたバス運行ダイヤの改善、超音波やLINEを活用した未病・健康の可視化、そして食の多様性や歴史文化の発信など、多岐にわたる「スマートサービス」の社会実装の最前線が共有されました。


 

第1部:パネルセッション

テーマ:インバウンド、ナイトタイムエコノミーのポテンシャル

イベント前半では、観光・インバウンド領域の最前線で活躍するスタートアップと、エリアマネジメントの専門家をお招きし、日本の夜間経済(ナイトタイムエコノミー)の活性化について議論しました。

【登壇者】

・西村 彰仁 氏 株式会社RelyonTrip 代表取締役

・中澤 英子 氏 株式会社ikura 代表取締役

・和田本 聡 氏 一般社団法人天王洲・キャナルサイド活性化協会 副会長

・梅澤 高明 氏 CIC Japan 会長、ナイトタイムエコノミー推進評議会理事

・モデレーター:鈴木祐介 CIC Institute Project Manager

ナイトタイムエコノミーがもたらす「3つの価値」

梅澤氏は、ナイトタイムエコノミーには経済的価値(消費拡大)、文化的価値(ストリートカルチャーの醸成)、社会的価値(多様なコミュニティの包摂)の3つの側面があると解説しました。特に社会的価値については、マイノリティの人々が安心して集まれる場所(包摂性)が、都市のクリエイティビティを高める重要な要素であると強調されました。

天王洲におけるアート×水辺の挑戦

和田本氏は、天王洲エリアでの実践事例を紹介。運河沿いの巨大壁画(ミューラルアート)やプロジェクションマッピングを活用し、夜間の景観を観光コンテンツ化する取り組みを共有しました。 一方で課題として、イベント開催日以外の人流確保や、夜間営業店舗の少なさが挙げられ、定常的なコンテンツの拡充が必要であるとの認識が示されました。

スタートアップによる「言語と情報の壁」の突破

ディスカッションでは、「インバウンドの”夜”を伸ばすには」、「求められる体験設計とデジタルの関与」というテーマでそれぞれの視点からディスカッションを行いました。

中澤氏(ikura)と西村氏(RelyonTrip)は、訪日客(インバウンド)が抱える「夜にどこへ行けばいいか分からない」「ルールが分からない」という課題に対し、デジタルツールを用いた解決策を提示しました。 

特に、WhatsAppなどの日常使いのチャットツール上でAIエージェントが多言語対応することで、スナックのような入りにくい店舗への送客や、予約の自動化が可能になる点が議論されました。


 

第2部:プロジェクト成果報告

今年度採択されたプロジェクトより、スタートアップと基盤提供者(事業会社・自治体)が登壇し、実証実験(PoC)の成果を発表しました。ここでは主なプロジェクトのハイライトをご紹介します。

1. 合同会社Limot × 一般社団法人 天王洲キャナルサイド活性化協会 / 三井不動産リアルティ

登壇者:香西 俊吾 氏(合同会社Limot CEO)

次世代モビリティと無人ガイドによる回遊性向上 

プロジェクト概要: 天王洲エリアのアート作品や北品川の歴史スポットを巡るツアーにおいて、ガイドの人手不足を解消するため、GPS連動型の多言語ガイドシステムを搭載した立ち乗り型EVモビリティを導入しました。

システムには仮想的なフェンスをコード上で設定する「ジオフェンス」技術が組み込まれており、通学路など走行禁止エリアへの進入を自動制御することで、無人貸出であっても安全性を担保した運用を実現しています。「人力車のような移動の価値」を無人で提供することで、単なる移動手段以上の体験価値を創出しました。

【実装パートナーからのコメント】

一般社団法人 天王洲・キャナルサイド活性化協会 和田本氏 「天王洲のアートツアーはまだ認知が進んでいない部分もありもったいないが、今回北品川エリアとも連携できたことで、面的な広がりが出てくると非常に面白いと感じている。」

三井不動産リアルティ株式会社 渡辺氏 「当社はこれまでキックボード等とも連携してきたが、Limotの座り乗りや立ち乗りモビリティは新しい体験。全国で展開するリパーク事業として、地域貢献の意味でも一緒に頑張っていきたい。」

 

 

2. 株式会社RelyonTrip × 京浜急行電鉄株式会社

登壇者: 西村 彰仁 氏(株式会社RelyonTrip 代表取締役)

羽田空港トランジット時間を活用した地域周遊「HANEDALL」 

プロジェクト概要: 羽田空港を利用する訪日客の「すきま時間(トランジット等)」に着目し、空港周辺の大田区エリアを周遊させるクレジット制パス「HANEDALL(ハネダール)」を開発しました。

アプリ「Sassy」の特徴である直感的なスワイプ操作とデジタルマップを活用することで、訪日客が複雑な路線図を理解せずとも「行きたい場所」を選び、スムーズに移動・決済ができる体験を設計しています。モニターツアーではハラル対応などの食の多様性にも配慮し、地域への経済波及効果を狙っています。

【実装パートナーからのコメント】

京浜急行電鉄株式会社 猪木氏 「羽田空港に到着したお客様が、そのまま品川や浅草へ通過してしまうのが長年の課題だった。大田区には魅力的なコンテンツがあるのに、我々鉄道会社だけでは『移動手段』しか提供できず『目的』が作れていなかった。RelyonTripさんのデジタル投資によって、地域を回る『目的』を作れたことが非常にありがたい。」

 

 

3. 株式会社ikura × 株式会社浜倉的商店製作所

登壇者: 中澤 英子 氏(株式会社ikura 代表取締役)

AIインバウンド担当による接客・予約の完全自動化 

プロジェクト概要: 訪日客が日常的に利用するメッセンジャーツール「WhatsApp」上で動作するAIエージェントを、新橋のエンタメ施設「グランハマー」に導入し、予約管理、問い合わせ対応、体験販売の完全自動化を行いました。

導入からわずか3ヶ月弱で売上が160万円以上増加し、問い合わせ解決率は100%を達成しています。また、AIが取得したチャットデータから「旅の疲れを癒やすマッサージチェアへのニーズ」など予期せぬインサイトを抽出し、新たなサービス開発への糸口を見出しました。

【実装パートナーからのコメント】

株式会社浜倉的商店製作所 安藤氏 「我々は『居酒屋』なので、高額なショーの予約などを海外OTA(旅行代理店サイト)でどう表現すればいいか分からず、PR不足を感じていた。WhatsApp導入後、いきなり団体客の大型予約が入るなど驚きの連続だった。海外OTAに支払う手数料の問題も、このツールでの直販強化で解決していきたい。」

 

 

4. 株式会社eftax × 森ビル株式会社

登壇者: 中井 友昭 氏(株式会社eftax 代表取締役)

食の多様性対応プラットフォーム「HaloDish」 

プロジェクト概要: 麻布台ヒルズにて、ハラル、ヴィーガン、ベジタリアンなどの食の制約を持つ訪日客に対し、安心して食事ができる店舗情報を提供する実証を行いました。

原材料データなどの一次情報をQRコード経由で可視化する取り組みの中で、「単なる情報提供だけでは集客につながらない」という課題に直面しましたが、そこから「食べられるメニューからお店を探す」という逆転の動線設計や、検索から予約・決済までをシームレスにつなぐ体験設計の重要性を見出しました。

【実装パートナーからのコメント】

森ビル株式会社 井本氏 「これまでは店に入ってからメニューを選んでいたが、『食べられるメニューから店を選ぶ』という今までにない体験が面白いと思い実施した。テナントからは厳しい意見もあったが、インド料理店などからは『スタッフの説明の手間が省け、理解も深まった』と評価された。今後はアプリのダウンロード動線をどう作るかが課題。」

 

 

5. 株式会社Simplee × JTB

登壇者: 諏訪 実奈未 氏(株式会社Simplee)

産前産後ケア体験ギフト「Becomme Mommy」 

プロジェクト概要: 「産後ケアの利用ハードル(心理的・金銭的)」を下げるため、企業から従業員へ、あるいは家族からパートナーへ贈ることができる「体験型ギフト」を開発しました。LINEなどで手軽に贈れるデジタルチケット形式を採用し、専門家(助産師・保育士)によるシッターサービスやケアを「ギフト」として受け取ることで、「頼ることは悪くない」という意識変容を促し、孤立しがちな産後育児の課題解決を目指しています。

【実装パートナーからのコメント】

株式会社JTB 青木氏 「JTB社内での新規事業開発において、まさに出産経験のある社員が起案したプロジェクト。Simplee様とタッグを組めるのは非常に心強い。来春のローンチに向けて、ぜひアドバイスをいただきながら進めたい。」

 

 

6. 株式会社ぐるり × 台東区

登壇者: 中野 賢伸 氏(株式会社ぐるり 代表取締役)

歴史音声ガイドマップによる「奥浅草」への人流分散 

プロジェクト概要: 大河ドラマ『べらぼう』の舞台となる台東区において、GPS連動型の歴史音声ガイドマップを提供し、浅草寺周辺に集中する観光客を吉原などの「奥浅草」エリアへ誘導する施策を行いました。アプリのログデータから実際に浅草寺からドラマゆかりの地へ人が流れている動線を可視化し、人のナレーションにこだわった臨場感あるガイドや周遊バスとの連携等により、地域の歴史文化の理解促進と回遊性向上に寄与しました。

【実装パートナーからのコメント】 本日は台東区様ご欠席のため、コメントは割愛されました。

 

7. 株式会社フツパー × 足立区

登壇者: 大竹 明良 氏(株式会社フツパー ビジネス開発本部 東日本営業部)

数理最適化AIによるコミュニティバスのダイヤ改善 

プロジェクト概要: 足立区のコミュニティバス「はるかぜ」において、「2024年問題(ドライバー不足)」と「利用者利便性」のバランスを取るため、AIによるダイヤ編成の最適化を行いました。数理最適化技術を用い、ドライバーの勤務時間制約、バスの台数、乗降データといった変数をパズルのように組み合わせることで、制約条件を満たす最適な解を導き出しています。シミュレーションの結果、ドライバーの労働負荷を平準化しつつ便数を維持するシフト表が作成され、2026年2月からの実運行に採用される予定です。

【実装パートナーからのコメント】 本日は足立区様ご欠席のため、コメントは割愛されました。

 

8. 株式会社WELL BE INDUSTRY / 株式会社HIL × 小田急SCディベロップメント

登壇者:小熊 美嘉 氏(株式会社HIL 代表取締役)、花高 凌 氏(株式会社WELL BE INDUSTRY 代表取締役)

商業施設をハブとした「未病」の可視化と行動変容 

プロジェクト概要: 小田急線経堂駅の商業施設にて、買い物ついでに健康状態をチェックできるイベントを開催し、「健康無関心層」へのアプローチを試みました。HIL社の超音波画像技術「お腹ソムリエ」で内臓脂肪や筋肉の状態などから食生活や運動不足についてのスコアを可視化する強烈な体験を提供し、その後の健康へ向けた行動変容を促します。

また、WELL BE INDUSTRY社の自覚症状の組合せから、LINEで未病を数値化できる「WELL BE CHECK」による未病段階での健康状態のスコア化を組み合わせ、ポイ活などをフックに継続的な健康行動を促す仕組みを構築しています。

 

【実装パートナーからのコメント】

株式会社小田急SCディベロップメント 加藤 啓太 氏「当社は『地域価値創造型企業』を目指しており、商業施設や不動産にどう付加価値をつけるかを考えている。今回は『ウェルネス不動産』という領域を作るべく、2社と提携した。沿線のお客様の健康と幸せをデザインしていきたい。」

 

 

コメンテーターの皆様

(左から 下薗 徹 氏 株式会社eiicon IQ室 QOO(インキュベーションクオリティ室 Quality of Open Innovation officer)、青木 優 氏 株式会社MATCHA 代表取締役社長、川端 由美 氏 自動車・環境ジャーナリスト、梅澤 高明 CIC Japan 会長)

 

クロージング

今回のDEMO DAYでは、各スタートアップが持つ尖った技術(AI、数理最適化、モビリティ制御)が、大企業や自治体の持つ「リアルな場(鉄道、ビル、商業施設)」と組み合わさることで、具体的な社会課題の解決策として実装されている様子が共有されました。特に、パートナー企業からのコメントには、単なる実験にとどまらず、事業としての継続性や展開への期待が強く込められていました。