本イベントは、東京都のイノベーション創出事業「TOKYO SUTEAM」に採択されたフード・アグリテック分野のシードアクセラレーションプログラムの成果発表(デモデー)として開催されました。国内プログラムと海外プログラムの双方に採択されたスタートアップが登壇し、日本から世界へスケールするフードテック企業の創出を目指した取り組みの成果が紹介されました。
イベント概要

1.スタートアップピッチ(国内プログラム)
合同会社シーベジタブル(共同代表 友廣 裕一 氏)
2016年に世界初となる地下海水を用いた青のりの陸上栽培事業をスタートさせ、現在は海面での栽培も行っています。磯焼け問題や海洋資源の減少といった課題に対し、30種類以上の海藻の種苗生産技術を確立。海藻栽培による生態系回復(ネイチャーポジティブ)の実証や、食品、化粧品、バイオプラスチックなど多様な用途開発に向けた企業連携が進められています。
トイメディカル株式会社(代表取締役 竹下 英徳 氏)
海藻由来のアルギン酸を活用し、塩味を感じながら体内で塩分を吸着・排出する「塩分オフセット技術」を開発。ラーメンチェーンや製パンメーカー、給食事業者との共同開発が進み、実際の商品化も決定しています。海外展開としてはスタートアップワールドカップへの出場や、シンガポールおよび欧州市場での展示・協業検討など、グローバルな減塩課題の解決に向けた取り組みが紹介されました。
2. スタートアップピッチ(海外プログラム)
海外プログラムでは、スペインのBasque Culinary Centerでの実証やメンタリングを通じて得られた成果が発表されました。
Wada FoodTech Co., Ltd.(Vice President 佃 征志郎 氏)
AIoTを活用し、温かく美味しい弁当を9秒で提供する「Hotチェーン弁当自動販売機」を開発。BCCプログラムでは、10時間以上の高温保持を可能にする弁当メニュー設計について、物理化学的アプローチを用いた研究を実施。食の品質とテクノロジーを融合した新しいフードサービスモデルの可能性が示されました。
輝翠TECH株式会社(創設者・CEO ブルーム タミル 氏)
宇宙ロボット技術を応用した農業ロボット「Adam」を開発。不整地でも稼働できる自動化ロボットとして、草刈りや農薬散布、収穫支援など農作業の自動化に取り組んでいます。スペインでの実証を通じて現地ニーズを把握し、今後はEU市場への展開を目指しています。
クオンクロップ株式会社(グローバル事業本部長 伊地知 のぞみ 氏)
食品・アグリ分野に特化した生成AI「Myエコものさし」を開発し、商品開発のアイデア創出やサステナビリティ評価を支援。スペインではホテルやレストランと連携し、地産地消の食材が環境や地域経済に与える影響の可視化などを提案。本プログラムを通じてグローバル市場でのプロダクト・マーケット・フィットに向けた手応えを得ました。
ナオライ株式会社(代表取締役 三宅 紘一郎 氏)
日本酒を低温で真空蒸留することで香りを残したまま蒸留酒化する技術を開発し、「浄酎」という新しい和酒カテゴリーを提案。余剰日本酒のアップサイクルという観点からも注目されています。BCCの香り分析機関で高い評価を受け、現地バーテンダーとともにライスカクテルの開発も実施。海外での蒸留所設立も視野に入れています。
コメンテーター
東京農工大学 ディープテック産業開発機構 准教授 / 跡部悠未氏
Future Food Fund株式会社 ファンドマネージャー(オイシックス・ラ・大地CVC)/ 梅村 翔也氏
Founder and Director, Better Earth Ventures / Ms. Rebecca Sharpe
3. パネルセッション「日本におけるフードテック投資の現在地と未来」
登壇者
SDG Impact Japan マネージング・パートナー 岡 由布子 氏
Beyond Next Ventures Partner 有馬 暁澄 氏
キリンホールディングス株式会社 head of Corporate Venture Capital 津川 翔 氏
モデレーター:CIC Institute Project Manager 谷口 理沙 氏

本セッションでは、フードテック投資の動向と日本のアグリフードスタートアップの成長可能性について議論が行われました。世界では2010年代前半からフードテックへの投資が拡大し、近年は成長を経て落ち着いたフェーズに入っています。日本でも2017〜2018年頃から有望なアグリフードスタートアップが生まれ、現在はミドル〜レーターステージへと成長しつつあり、エコシステムは次の発展段階に入りつつあります。特に近年は、バイオマテリアルやバイオアグリカルチャーなどサプライチェーン上流の技術領域への関心が高まっており、発酵やバイオなど日本が強みを持つ基礎技術を活かした展開への期待が高まっています。
一方で、今後世界でも戦える日本発フードテックを生み出していくためには、技術力に加えてマーケット視点を持った事業開発や経営体制の強化が重要であるとの意見が挙げられました。特に、資本戦略を踏まえて事業を成長させる経営人材やCMO人材の育成、リードVCによる伴走支援、CVCや大企業との連携による事業開発やM&Aなどの出口戦略の充実が求められており、こうした取組を通じてエコシステムを強化していくことが重要であるとの認識が共有されました。
本イベントは、日本の強みを活かしたスタートアップの創出とグローバル展開の実現に向けて、こうした課題と可能性を多様なプレイヤーが共有し、今後のアグリフードエコシステムの発展に向けた連携の重要性を再確認する機会となりました。CICは今後も、スタートアップ・投資家・企業が交差するハブとして、グローバルに挑戦するスタートアップの創出とエコシステムの発展を支えていきます。