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Japan Deep Tech Night 2026 開催レポート4地域18社が示す、ディープテック社会実装の現在地と未来への共創

March 10, 2026

2026年2月16日、CIC Tokyoにて「Japan Deep Tech Night」を開催しました。本イベントは、茨城、千葉、愛知、Hokkaidoの4地域が連携し、各自治体等が支援するディープテック・スタートアップ18社が登壇し2025年度のプログラム成果発表などが行われました。社会実装へと挑む起業家たちのリアルと、それを支えるエコシステムの現在地、そして次なるイノベーションに向けた共創の可能性について、多様な参加者が熱く交流した一夜をレポートします。

 

■ 開催概要
・日時:2026年2月16日(月) 15:45 – 21:00
・場所:CIC Tokyo および オンライン(ハイブリッド開催)

 ・主催:茨城県・千葉県・愛知県・STARTUP HOKKAIDO実行委員会・農林水産省・CIC


■ 全体
本イベントでは、Hokkaido、愛知、千葉、茨城の4地域から、宇宙、エネルギー、新素材、ライフサイエンス、AI、農業など多岐にわたるディープテック領域から18社のスタートアップが登壇しました。各地域が持つ独自の産業基盤とディープテックの融合が、いかにして次の産業成長を生むか、加えて社会課題解決に結びつくかが示され、オフライン・オンライン合わせて366名を超える参加者が熱心に耳を傾けました。

 

セッションハイライト
Session 1
Pitch from Hokkaido 〜「HOKKAIDO Next Frontier Program – Space / Agri&Food」参加企業ピッチ〜

 

ピッチ概要:フードテック、アグリテック、海洋、宇宙といった北海道の強みと直結した技術・ビジネス。ASTRA FOOD PLAN株式会社の「隠れフードロス」を解決する高速乾燥技術や、ONDO SPACEの低コストな衛星通信エコシステムなど、地球規模の課題に直結する技術が発表されました。

コメンテータからは、「これまで作れなかった土地で作物を育てるというビジョンは、グローバルな食料安全保障の観点から非常に魅力的」(名倉勝氏/CIC ・ Founders Nation)といった技術の独自性を証明する科学的エビデンスの重要性や、グローバル展開を見据えた知財・事業戦略、導入障壁を下げるビジネスモデルの構築が助言されました。

 

 


Session 2

Pitch from Aichi 〜2025年度愛知県ディープテック推進事業「Aichi Deeptech Launchpad」参加企業ピッチ〜

 

ピッチ概要:愛知県産業と親和性のあるセンサー、素材、エネルギー、医療、アグリなどの革新的技術を強みとする県内外のスタートアップ5社が登壇。

株式会社HelicalFusionによる核融合発電の社会実装に向けた挑戦や、株式会社INOMERによる着るロボットを活用したリハビリ領域への提案など、社会実装を見据えた野心的なピッチが展開されました。

コメンテータからは「技術のプログレスと商売のプログレス、両方をしっかり話せるといい」(片桐大輔 氏/千葉大学)という指摘に代表されるように、「面白い技術」から「儲かる事業」へ転換するための出口戦略、特に「量産化」と「コスト競争力」という事業化における二大障壁をいかに乗り越えるかが焦点となりました。

 


Session 4
Pitch from Chiba 〜2025年度千葉県「革新的ベンチャー企業成長促進プログラム」参加企業ピッチ〜

 

ピッチ概要:研究開発機関や大学等高等研究機関を多数有する千葉県から、技術をビジネスに、そして海外市場を開拓する、AI眼科検査機器、リチウム電池、ナノ量子センサーなどの技術を有する3社がピッチ。

Type-I Technologiesによる量子センサーを活用した超高感度リキッドバイオプシーや、LiSTieによる超高純度リチウム回収技術などは、千葉県が誇る大学・研究機関発の高度な技術力を示しました。

コメンテータからは「巨額の資金を要する装置産業においては、VCだけでなく事業会社を巻き込んだ資本業務提携が重要」と言うフィードバックや、技術の応用可能性の観点から、初期段階でより早期に収益化できるBtoBへの展開が例示されるなどしました。

 


Session 5

Pitch from Ibaraki 〜2025年度茨城県「ベンチャー企業成長促進事業(成長プログラム)」参加企業ピッチ〜 

 

ピッチ概要:茨城県は、地域の産業振興とイノベーション創出を目的に、ディープテック/先端技術ベンチャーの育成に注力しています。社会課題の最前線に立つ茨城県発ディープテックスタートアップ5社が登壇しました。エア・メンブレンによる「グラフェン」の量産化技術や、野生動物医科学ラボラトリーによる次なるパンデミックを防ぐための検査体制構築など、各社のピッチには、長年の研究開発を経た技術力と、それを大きな産業、経済にしていこうというプランと自信が示されました。 

*本事業登壇者のうち、株式会社クォンタムフラワーズ&フーズは農林水産省「Foodtech Global Expansion Program」にも採択。

コメンテータからのフィードバックと質疑応答では、優れた素材や技術をいかにして「売れる製品」に結びつけるか、ビジネスモデルの進化が論点となりました。「照射(受託)からスクリーニング(解析)へと事業を拡張し、単価と受注確度を上げていく今後の戦略についてもっとアピールすべき」(池田顕史氏/株式会社環境エネルギー投資などと、より付加価値の高いビジネスへの転換が成長の鍵として挙げられました。



Session 3

Deep Tech Roundtable

イベントでは モデレーターに真尾 淑子氏(東京科学大学・イノベーションデザイン機構/副機構長 ,特任教授)を迎えて、アクセラレーションプログラムを経験した3社、石崎勇歩氏/さかなドリーム CMO塚本俊彦氏/イルミメディカル CEO)丸島愛樹氏/クレステックバイオ代表取締役によるパネルディスカッションも行い、ディープテック特有の研究から事業化への障壁と飛躍の可能性などが語られました。

さかなドリーム 石崎氏は「魚を育てて、それを市場に出すまで、年単位の時間がかかる。このビジネスモデルを投資家の方に理解してもらうのが、まず最初のハードルだった。多くのVCは、1,2年で急成長するIT系のスタートアップをイメージされていることも多く時間軸の長いビジネスをどう説明するか、どういうマイルストーンを設定して着実に進んでいることを見せるか、という点に非常に頭を使った」とし、

 
クレステックバイオ 丸島氏は、「研究者が好む論文向けの派手な研究よりも製薬企業は地味且つ確実なデータを求めるなど、当初、創薬の市場性やプロセスがわからない中で、メンバーを揃えて進める難しさがあった」と、研究とビジネスのギャップを率直に披露しました。


イルミメディカル 塚本氏からは、「複数の資金調達を組み合わせたことも重要だった。VCからの出資だけでなく、NEDOなどの公的助成金も積極的に活用した。国や自治体のプロジェクトとして採択されることは、技術とコーポレートの信頼性を高める効果もあり、これにより、資金調達がよりスムーズに進んだと思う」と振り返られました。


■ イベントを通したコメンテータから企業への主な指摘※一部抜粋

「自分の技術が、既存のサプライチェーンのどこをどう変えるのか、それによって誰がどれだけハッピーになるのかを、具体的な数字で示すことが重要」()
「壮大すぎて、逆に足元のマイルストーンが見えにくい。来年、再来年に何を達成するのか。その短期的な目標と成果をしっかり見せていくことが、長い旅路を支える仲間を増やす上で不可欠」(伊藤仁成/株式会社MTG Ventures)

「技術のプログレスと商売のプログレス、両方をしっかり話せるといい。技術的にこんなことができるようになりました、だからこういう商売が次のステージに進めます、というセットで語れると、投資家は評価しやすい。」片桐大輔/千葉大学)

「ディープテックは、どうしても技術の話に偏りがち。でも投資家が見ているのは、その技術を使ってどんな『強い事業』を作れるか。経営チームのバランス感覚が問われる。」奥田 浩美氏/株式会社ウィズグループ)

 

■ イベントの意義
本イベントは、各自治体等の強力な支援とスタートアップの革新的な技術が接続することで、地域がディープテックの「社会実装の実証フィールド」として機能することが証明されました。
地域単独では解決が難しい課題に対して、各地域のエコシステムがCICというハブを通じて交わり、広域連携によって解決策を見出す場ともなりました。
CICは今後も、多様なプレイヤーが交差する結節点、世界に飛躍するステージとして、エコシステム全体の活性化を促進していきます。