国内最大級のイノベーションセンターであるCIC Tokyoは、2020年10月1日にオープンし、これまで150社以上の企業・団体に入居いただいています。また、CIC Tokyoで開催される様々なイベントに2万人以上の方々に参加いただきました。この度、オープン1周年を記念して、2021年10月21日はCIC Tokyoの施設を一般公開するとともに、Venture Café Tokyoと共同でCIC創業者による講演、CIC Tokyo入居者によるプロダクト展示、イノベーション・エコシステムの専門家によるレクチャー、CIC Tokyo入居者によるピッチ、スタートアップ支援者によるパネルディスカッションなどを行いました。続く10月22日にはCIC Tokyo入居者向けのイベント”CICers感謝祭”を実施しました。
Venture Café Tokyoは、CIC Tokyoの姉妹団体であり、起業家や起業を志す人、投資家、研究者等、多様なイノベーター達が集い、繋がり、これまでにないイノベーションを社会に対して生み出すコミュニティとして活動しています。今回の1周年記念イベントINNOVATION TALKはVenture Café Tokyoが毎週木曜日に実施するイノベーションイベントであり、毎週多くの人が集うThursday Gatheringの中で実施いたしました。
■ 開催概要
開催日時 2021年10月21日(木) 16:00〜21:00
開催形態 現地参加(虎ノ門ヒルズビジネスタワー15F)及びオンラインのハイブリッド
使用言語 日/英
■プログラム
16:00~16:30 Thursday Gatheringの楽しみ方
16:30~17:00 オープニングトーク 元内閣府副大臣 平将明氏、 CIC Japan 会長 梅澤高明
17:00~18:30 CIC Tokyo入居スタートアップによるStartup Pitch / CIC Tokyo入居スタートアップ
18:30~19:15 日本のスタートアップを加速するためのエコシステムとは / 内閣府 伊藤匠氏、Victor Mulas氏 (英日通訳)
19:15~20:15 イノベーションハブ・ラウンドテーブル /渋谷QWS 野村幸雄 氏、Link-J 曽山明彦 氏氏、Plug and Play Japan藤本 あゆみ 氏、CIC Tokyo 名倉 勝(日英通訳)
20:15~21:00 CIC Past and Future / CIC創業者兼CEO Tim Rowe (英日通訳)
ご来賓として元内閣府副大臣の平将明氏に開会のご挨拶いただいたのち、CIC Tokyo会長の梅澤高明によるCIC Tokyo開業から1年間の成果を発表するとともに、平氏と梅澤によるイノベーション創出についてのクロストークを行いました。
平氏からはイノベーション創出に向けた政府の動きとともに、新しいビジネスが直面することになる規制をどのように乗り越えるのか、スタートアップを応援するメッセージをいただきました。
CIC Tokyo では、これまでライフサイエンス、環境・エネルギー、医療機器、スポーツ、研究者、ディープテックといった様々なテーマのピッチイベントを主催し、起業家、イントラプレナー(社内起業家)、研究者、アスリート、地方自治体といった幅広い方々の新たなチャレンジを応援してきました。1周年記念イベントでは、CIC Tokyoに入居されているスタートアップの方々による、豪華賞品をかけたピッチコンテストを開催しました。ピッチの審査員はCIC Tokyoに入居するベンチャーキャピタル(VC)の方々に務めていただきました。
<登壇者>
メタジェンセラピューティクス株式会社 代表取締役CEO 中原 拓 氏
NGA Ltd. CEO QIN WANG (Alex)氏
株式会社エナーバンク 代表取締役 村中 健一 氏
エーアイシルク株式会社 取締役 原雄二 氏
quintet株式会社 代表取締役社長 小守谷 直毅 氏
株式会社レストアビジョン 代表取締役社長 堅田 侑作 氏
株式会社Unpacked 取締役CTO 髙津悠樹 氏、取締役CDO 松永幸樹 氏
I’mbesideyou Inc. 代表取締役社長 神谷 渉三 氏(オンライン)
<審査員>
森 文隆 氏
大鵬イノベーションズ合同会社 パートナー
2003年に大鵬薬品に入社し、創薬研究に従事。その後、創薬企画部門にて、シーズ探索のための大学・ベンチャー企業との共同研究推進、アーリーステージアセットの導入評価、ポートフォリオ戦略の策定をリード。2015年にRemiges Ventures(独立系VC)に出向し、米国ボストンを拠点に創薬ベンチャー投資を担当。投資先の米国ベンチャー企業の取締役を務める。2019年7月より、大鵬薬品のCVC:大鵬イノベーションズ(2019年5月設立)にて、日本のヘルスケア領域における、インキュベーション、起業、投資活動を開始。
鈴木絵里子氏
MPower Partners Fund Managing Director
モルガン・スタンレーおよび UBS 証券の投資銀行部門にて、M&A やグローバルオファリング・IPO 業務に従事。2016 年より社会的インパクトベンチャー投資を行うミスルトウ株式会社にて投資部ディレクターを務めたのち、グローバル VC フレスコ・キャピタルのゼネラル・パートナーに就任。欧米及び中東で育ち、マギル大学経済学部を卒業。
宮宗 孝光 氏
DIMENSION株式会社 代表取締役
東京工業大学・大学院を卒業後(飛び級)、シャープ株式会社を経て2002年ドリームインキュベータ入社。大企業とベンチャーの戦略策定、幹部採用、M&A、提携などを推進。ベンチャー支援の実績として、4社の上場、6社のMBOに貢献。直近の投資・支援先はSHOWROOM、五常・アンド・カンパニー、AnyMind Group など。2006年から起業家との勉強会を主催。メンバー17名中、10名が上場。現在、国内ベンチャー投資・上場支援事業を統括。支援先のトライオン株式会社の社外取締役、日本スタートアップ支援協会の顧問を兼任。
発表者は遺伝子治療を行う慶應義塾大学発スタートアップ、自治体との提携を進めるエネルギースタートアップ、オンライン会議の感情分析をするスタートアップ、高校生スタートアップなど様々なスタートアップがピッチを行い、多くの観客が聞き入る非常に盛り上がる会になりました。
審査の結果、株式会社エナーバンク、I’mbesideyou Inc.、株式会社レストビジョンが入賞し、副賞としてCIC Tokyo入居費用割引特典が授与されました。
なお、CIC TokyoとVenture Café Tokyoはこのようなピッチイベントを開催していますが、なかでもVenture Café TokyoのRocket Pitch Nightは日本でも最大級のピッチイベントとなり、次回は2021年11月11日に実施される予定です。
スタートアップには日本の経済発展やイノベーション創出の原動力としての期待がかけられています。例えば、日本で普及している新型コロナウィルスのワクチンの開発にはスタートアップが大きな役割を果たしており、より多くのスタートアップが成長することでこのようなイノベーションの創出が期待できます。一方、日本におけるユニコーン企業(時価総額1,000億円以上の未上場企業)の数は、日本の経済規模や技術力に比して少なく、より多くのスタートアップの創出・成長のポテンシャルがあると言えます。どのような環境があれば日本からより多くのスタートアップが輩出されるのでしょうか。
世界銀行においてスタートアップ・エコシステムの調査を主導し、スタートアップ・エコシステム拠点都市の審査委員でもあるVictor Mulas氏と内閣府の伊藤匠氏にMulas氏が内閣府で発表した近年の調査結果や世界レベルのスタートアップ・エコシステム構築に必要な打ち手について講演いただきました。特にMulas氏からは、日本には成長するスタートアップが生まれるポテンシャルがあること、成長に向けて資金供給やネットワーク形成が必要になることが強調されました。加えて伊藤氏からは政府における拠点形成の取り組みやその重要性についてのお話をいただきました。
<<講演者略歴>>
Victor Mulas(ヴィクター・ムラス)氏
世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)
世界銀行上級都市専門官 兼 TDLCチームリーダー
Victor Mulas is the team lead of the World Bank Tokyo Development Learning Center (TDLC), a global knowledge hub of urban development practices. In Japan, he serves as a member of the evaluation committees of the startup ecosystem promotion project and the Japan startup national ecosystems hubs initiative led by the Japan Cabinet Office, and as executive advisor of the Smart City Institute Japan. Prior to this, Victor led the Disruptive Technology for Development (DT4D) Program at the World Bank, developed the Cities’ Startup Ecosystems business line at the Innovation and Entrepreneurship Unit, and set up the internal Innovation Acceleration Program at the World Bank’s Innovations Labs. During his career, he has led several open innovation and startup ecosystem development projects across the world and has authored leading research on startup ecosystems, technology disruption and economic transformation.
世界銀行上級都市専門官 兼 Tokyo Development Learning Center(TDLC)チームリーダー。なお、TDLCは都市開発についての世界中の知見を集約する世界銀行のセンターである。
ムラス氏はスタートアップエコシステム推進プロジェクトやThe Japan Startup National Ecosystems Hubsなどの内閣府のプロジェクトの有識者委員、一般社団法人スマートシティ・インスティテュート(Smart City Institute Japan)のエグゼクティブアドバイザーなども務める。以前は、世界銀行で開発のための最先端技術(Disruptive Technology for Development; DT4D)プログラムの統括、イノベーションおよびアントレプレナーシップ部門で都市のスタートアップエコシステムビジネスラインの開発、そして世界銀行のイノベーションラボで社内のイノベーション加速プログラムの立ち上げなどを行ってきた経歴も持つ。これら以外にも、ムラス氏はこれまでのオープンイノベーションやスタートアップエコシステム発展のプロジェクトを世界各国で行なってきており、スタートアップエコシステムや破壊的的テクノロジー、経済発展の研究も行ってきた。
伊藤 匠 氏
内閣府科学技術・イノベーション推進事務局大学改革・ファンド担当室参事官補佐
As the Deputy Director for the Science, Technology and Innovation Policy at the Cabinet Office, Sho Ito leads the National Startup Strategy, Startup Ecosystem Survey in collaboration with the World Bank, the University Endowment Fund (10 trillion yen). Before joining the Cabinet Office, He promoted innovation and entrepreneurship initiatives at the World Bank and university-industry joint research, entrepreneurship education, and startup policies at the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT). M.A. in International and Public Affairs, Columbia University.
内閣府にて、スタートアップ戦略の策定、世界銀行との「スタートアップ・エコシステム調査」の共同実施、「大学ファンド(10兆円規模)」の創設を担当。世界銀行にてInnovation and Entrepreneurshipに従事。文科省にて産学共同研究、起業家育成、スタートアップ政策を担当。コロンビア大学国際公共政策大学院修士課程卒。
これまで東京におけるスタートアップの創出・成長には様々なイノベーションハブ・アクセラレーター・コミュニティが大きく貢献をしてきました。海外の都市においても、起業家、イントレプレナー、大企業、投資家、研究者、学生、各種専門家を繋ぎ、新規事業の成長を促すプレイヤーは大きな役割を果たしてきています。続くセッションでは、スタートアップ支援やコミュニティ構築、オープンイノベーション支援といった分野で活躍してきた東京都副知事の宮坂氏、SHIBUYA QWSの野村氏、Plug and Play Japanの藤本氏、LINK-Jの曽山氏をお招きして、それぞれの取り組みをご紹介いただくとともに、これからスタートアップや大企業がどのように様々な場を活用できるのか議論をしました。
特に話題になったのは、これまで各者が行ってきた取り組みを海外に発信していくのか、そして都が取り組んでいる様々な施策との連携するための民間の体制などです。今後のエコシステムのプレイヤー全体の連携が期待されます。
<<講演者略歴>>
宮坂 学 氏
東京都副知事
2012年から18年までヤフー(株)代表取締役社長を務める。19年7月に東京都参与に就任し、同年9月より現職。東京版Society 5.0「スマート東京」の実現に向けた都政のDXの推進や、「国際金融都市・東京」の実現、スタートアップ支援など、東京の成長戦略を担当している。
野村 幸雄 氏
渋谷スクランブルスクエア株式会社 営業一部 部長
SHIBUYA QWS エグゼクティブディレクター
2001年に東京急行電鉄株式会社に入社し、財務部にてファイナンス業務を担当。2010年に株式会社東急百貨店へ出向し、同じくファイナンス業務を担当。2014年に復職し都市開発事業本部渋谷開発事業部にて渋谷スクランブルスクエアのプロジェクトマネージャーとして企画・開発を担当。2018年に渋谷スクランブルスクエア株式会社へ出向し、引き続き現プロジェクトを担当。渋谷キューズで渋谷ならではのコミュニティから新たな社会価値の創出を目指している。
藤本 あゆみ 氏
Plug and Play Japan 代表理事 執行役員 CMO
大学卒業後、2002年キャリアデザインセンターに入社。求人広告媒体の営業職、マネージャー職を経て2007年4月グーグルに転職。代理店渉外職を経て営業マネージャーに就任。女性活躍プロジェクト「Women Will Project」のパートナー担当を経て、同社退社後2016年5月、一般社団法人at Will Workを設立。株式会社お金のデザインでのPR マネージャーとしての仕事を経て、2018年3月よりPlug and Play株式会社でのキャリアをスタート。現在は執行役員CMO としてマーケティングとPRを統括。
曽山 明彦 氏
LINK-J常務理事/President and CEO
東京大学理学部物理学科卒業後、通商産業省入省。人事院長期在外研究員として米国コロンビア大学ビジネススクールに留学(MBA)。(株)ボストンコンサルティンググループのマネージャー、トランス・コスモス(株)専務取締役を経て、ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)ヴァイスプレジデント、複数の欧米系医療機器企業の日本法人社長を歴任。東北大学特任教授。厚生労働省、経済産業省、AMED、神戸市、札幌市の委員会メンバー等を務める。
名倉 勝
CIC Tokyo ゼネラルマネージャー
慶應義塾大学理工学部物理学科卒、東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻博士課程修了、Massachusetts Institute of Technology System Design and Management Program修士課程修了。2011年に文部科学省入省後、大学発ベンチャー政策、産学連携政策、起業家教育政策、原子力規制等に携わる。その後、経営コンサルティングファーム、ベンチャー キャピタルを経て現職。現在はCambridge Innovation Center(CIC) Japanでアライアンス構築等を担当
INNOVATION TALKの最後はCIC創業者CEOのTimothy Rowe(ティム・ロウ)の講演で締めくくりました。
CICは1999年にマサチューセッツ州ケンブリッジ市で創業し、これまで多くの起業家に親しまれてきました。今回の創業者兼CEOのティム・ロウの講演では、どのようにCICを創業したのか、CICを含むイノベーションエコシステムが、米国東海岸でどのような役割を果たしてきたのかのかをお話ししました。加えて、ティム・ロウ及びCICが日本にかける期待についてもお話しをさせていただきました。
<<講演略歴>>
Timothy Rowe
CIC(ケンブリッジイノベーションセンター)創業者兼CEO
世界最大のスタートアップ専用シェアオフィススペース、CIC(ケンブリッジイノベーションセンター)の創業者及びCEO。CICをベースに成長した数々のスタートアップへの投資総額は一兆円を超える。現在は米国マサチューセッツ州ケンブリッジとボストンに加え、米国ではプロビデンス(ロードアイランド州)、セントルイス(ミズーリ州)、マイアミ(フロリダ州)、フィラデルフィア(ペンシルバニア州)に展開。2016年から欧州での展開も開始し、オランダのロッテルダム、ポーランドのワルシャワでもイノベーションセンターを運営てしている。これまでにCICを利用した企業・組織の数は累計7,500社以上に登る
10月21日にはCIC入居者向けの感謝祭を開催しました。懇親のためのゲームや、CIC開業時よりの入居者へのプレゼントの贈与などを含め、CIC Tokyo入居者コミュニティを改めて深める会となりました。
10月21日、22日の両日、CIC Tokyo入居者がプロダクトやVRコンテンツを展示するOpen Houseを実施しました。CIC Tokyoの6,000平米のスペースを使って大変多くの展示物があり、CIC入居者の多様性や、事業の新規性がよくわかる展示となりました。例えば、3Dプリンティング、スマートインターフォン、アート作品、睡眠中に体調を整えるマットなど多様な展示があり、CIC入居者だけなく外部からご来訪された方も楽しまれていました。