開催レポート:「世界で注目の新市場『フェムテック』の可能性」 国際女性デーに開催したフェムテックのイベントには、女性だけではなく男性の来場者や視聴者も多く参加し、新しい産業への期待感が感じられました。
CICからのお知らせ

3月8日の国際女性デーは世界各国で、女性の活躍や、ジェンダー平等などを促進する機会となっています。

CIC Tokyoではオープン以来初めて迎えるこの日に、女性起業家のサポートや新しい産業への関心を高める目的として、フェムテックに焦点を当てたイベントを開催しました。

100名以上のオンライン視聴者と会場参加者に向けて、最前線で活躍するスタートアップ企業や、新たなイノベーションを推進する大企業から、それぞれの視点で当分野のポテンシャルをお話いただきました。

フェムテックは女性に限定された市場と捉えられがちですが、今回は男性の参加者も多く、新たな市場・ビジネス領域としても関心が高いことが参加者の層からも見受けられました。

■フェムテックとは■

フェムテックとは、Female+Technologyを組合せた造語で、女性が抱える月経や不妊治療などの健康問題をテクノロジーで解決する分野を指します。昨年は、日本でも様々なフェムテック企業や製品・サービスが発表され、国会でもフェムテック議連が発足して普及に向けた規制見直しを進めるなど、大きな動きが生まれています。

■登壇者一覧■

株式会社エムティーアイ ヘルスケア事業本部 /ルナルナ事業部 /ルナルナ 副事業部長 那須理紗 氏

株式会社Yazawa Ventures 創業者/ CEO 矢澤麻里子 氏

・CIC Japan会長/A.T. KEARNEY日本法人会長 梅澤高明

fermata株式会社共同創業者 / CEO, DrPH /公衆衛生博士 杉本亜美奈 氏

SOMPOひまわり生命保険株式会社 蓮井智子 氏

三菱総合研究所 未来共創本部 主任研究員 鈴木 智之 氏

・株式会社アイスタイル BeautyTech.jp 編集長 矢野貴久子 氏

Global Brain株式会社 Investment Group Director 皆川朋子 氏

・CIC Japan ディレクター 平田美奈子

最初のパネルセッションのテーマは「これから発掘すべき潜在マーケットの可能性 」。

CIC Tokyo会長の梅澤高明がモデレーターを務め、女性向け市場のこれまでの発展と現状について、株式会社Yazawa Ventures 矢澤麻里子 氏、株式会社エムティーアイ ルナルナ 副事業部長 那須理紗 氏にお話いただきました。ルナルナは今年で20年を迎え、日本における生理管理ツールとしてはNo.1のユーザー数を誇り、最近は医療機関との連携でさらなるサービスの向上を目指しています。近年は、女性と医師を繋ぐアプリの開発を進めており、生理の記録を医療に役立てる取り組みもされています。

ベンチャーキャピタリストの矢澤氏には、Yazawa Venturesにとっての、フェムテックの位置付けについてお話を伺いました。投資領域として「個人がよりよく働いていくためのイノベーション」を起こすスタートアップを対象としていることから、女性の働く環境をよりよくするフェムテックとの親和性も強く、積極的な投資対象になっているとのことです。また、海外では広まっているのにも関わらず、日本の規制でまだ実現できていないサービスにチャレンジするスタートアップの台頭にも、期待を示されました。

続いて、fermata株式会社共同創業者 杉本亜美奈氏に「Femtech最前線〜タブーが市場を創り出す〜」のセッションでお話いただきました。世界でのフェムテックムーブメントについて、世界のフェムテック関連企業が2017年の50社から2020年484社に急成長したことや、近年の市場の急速な拡大、投資額の拡大から、今後もこの成長は広がり続けるとの見方を示しました。また、日本で最大のフェムテックECサイトを運営するfermartaの製品の多くは海外から輸入されており、その一部をご紹介いただきました。例えばオーストラリアでは男性のトランクスの形をした生理下着が販売されており、トランスジェンダーの方なども対象にしたフェムテック商品など、さらに先進的な市場も紹介していただきました。

SOMPOひまわり生命保険株式会社 蓮井智子 氏には、「Femtech領域へ切り込む大企業の取り組み 」というテーマで、大企業の視点からお話いただきました。SOMPOホールディングスは女性活躍推進に優れた上場企業として評価されており、その中で蓮井氏はフェムテック関連の新規サービスの開発担当をしています。2025年にはフェムテック市場規模が現在の400億円から5兆円になると見込まれており、SOMPOひまわり生命保険が実施した調査によると、企業が福利厚生などを通じて働く親に投資することは人材の定着や生産性の向上により5.5倍の収益成長が見込まれているそうです。人生のライフイベントと健康に着目し、新しいサービスの開発に役立てているとのことです。

最後は登壇者が集まり、「グローバル動向から見る日本の潜在市場について 」と題し、パネルディスカッションを行いました。那須氏、杉本氏、蓮井氏に加え、三菱総合研究所 未来共創本部 主任研究員 鈴木 智之 氏 と、ファシリテータに株式会社アイスタイル BeautyTech.jp 編集長 矢野貴久子 氏を迎え、日本が海外と比べどのようなフェムテックの発展を遂げていくのか、登壇者の皆様で意見交換をしました。

美容業界の国内外のイノベーションを発信するB to Bメディア、BeautyTech.jp編集長の矢野氏によると、美容とヘルスケアの距離が年々近づいていることから、BeautyTech.jpでは2018年ごろからフェムテックのコンテンツを掲載し始めたそうです。矢野氏も投資額が大きく伸び始めているフェムテック業界に注目していると仰られました。

三菱総合研究所 未来共創本部 主任研究員の鈴木氏は、ヘルスケア領域のアクセラレーションプログラムや投資を担当されておりシンクタンク・コンサルティングの目線で当議論に参加されました。50年後のフェムテックについては、技術だけでなく様々な規制や制度の改革が必要だと述べられました。

また、セッション中、杉本氏は「実は日本でフェムテック関連商品はタブー視されていないのではないか」と述べられ、海外に比べメディアなどの規制が比較的緩いことや、開発は欧米が進んでいるものの、購入は日本が多い商品の事例を紹介されました。

今回のイベントで、日本にはフェムテック産業の広がるポテンシャルが大きいことを強く感じました。印象的だったのは、杉本氏が「フェムテックのゴールとしては、フェムテックという言葉がなくなり、特別視されなくなること。」と、女性関連産業が他のヘルスケア商品と同等に扱われることが目標と仰られたことです。

イベントの最後には、Global Brain株式会社 Investment Group Director 皆川朋子 氏より、フェムテックコミュニティ新設の発表がありました。フェムテック関連の情報共有、ネットワーキングを通じた業界全体の推進を目的とし、スタートアップ、大企業、投資家など、幅広いメンバーを募集しています。

CIC Tokyoディレクターの平田も初期メンバーとして参画しており、フェムテック業界をさらに盛り上げて行きます。

イベントアーカイブ動画