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Be Smart Tokyo 2025年度 DEMO DAY 第①弾 〜環境、ウェルネス、不動産DX Day〜 開催レポート

January 30, 2026

2026年1月23日、CIC Tokyoおよびオンラインにて、「Be Smart Tokyo 2025年度 DEMO DAY 〜環境、ウェルネス、不動産DX Day〜」を開催しました。本イベントは、東京都が主導するスマートサービス実装促進プロジェクト『Be Smart Tokyo』の一環として、スタートアップと事業会社(基盤提供者)が連携し、都民のQOL(生活の質)向上を目指して取り組んだプロジェクトの成果報告会です。

当日は、過年度に実装された成功事例を深掘りするパネルセッションと、今年度採択された6つのプロジェクトによる成果報告ピッチが行われました。介護現場の労働負荷軽減、AR(拡張現実)を活用したビル管理、空間のウェルビーイング評価、廃棄物削減と資源循環、そして不動産の社会的インパクト評価など、多岐にわたる「スマートサービス」の社会実装の最前線が共有されました。


第1部:パネルセッション

テーマ:テクノロジー×現場のオープンイノベーションがもたらす社会インパクト

イベント前半では、2023年度 Be Smart Tokyo CICプログラムに参画されていた、Rehabilitation3.0株式会社 増田氏と協業パートナーである、積水化学工業株式会社荒波氏に、プロジェクトの経緯や成果、社会実装後の現場の声についてお話を伺いました。

【登壇者】

  • 増田 浩和 氏(Rehabilitation 3.0株式会社 CEO)
  • 荒浪 亮 氏(積水化学工業株式会社 高機能プラスチックスカンパニー インダストリアル戦略室SDプロジェクト プロジェクトヘッド)
  • モデレーター:溝手 翠 氏(CIC Institute Assistant Director)

 

介護現場の「見守り」を変革する:センサー×AIの挑戦

積水化学工業が開発・展開するマット型センサー「ANSIEL(アンシエル)」と、Rehabilitation 3.0が開発したバイタルデータのAI解析技術「Reha3.0 (リハサン)」を連携し、両社が共同で介護現場に導入することで、介護現場における深刻な人手不足や過酷な労働環境の解決を目指しています。
増田氏は、30床をたった1人で見守る「暗闇の中で誰が転倒しているかわからない」過酷な介護施設の現場の課題について共有し、センサーから取得できるバイタルデータをAIが解析し日々のリスクを可視化することで、夜間の監視対象者を30名から実質5名程度に絞り込み、見守り業務の83%削減を達成できると報告。頻発するアラートを「1時間に6回の無言電話」に例え、AIにより「出るべき電話(本当に危険な状態)」が明確化され、スタッフの精神的負担も大幅に軽減されたとお話し頂きました。

スタートアップとの共創・技術の導入ハードルについて、荒波氏は当初は積水化学工業社内でも、技術へ懐疑的な声もあったが、Be Smart Tokyoを活用して、費用面の支援もあり実証実験を行えたことで、結果を証明し社内での信頼を獲得できたと振り返りました。

介護現場の反応については、増田氏から「夜専(夜勤専門職員)」と呼ばれる、患者様の顔と名前を記憶する事が難しい派遣スタッフでも、顔写真付きのリスク表示アプリ(スマホ対応)を見るだけですぐに業務に入れる点が評価されおり、また若いスタッフにとっては、DXが進んでいることが就職先選びの基準にもなっていると現場の声を共有いただきました。

今後の展望について 荒浪氏は、この技術を介護施設だけでなく一般家庭や受験生の体調管理にも広げたいと語り、増田氏はタクシードライバーの事故予兆検知など、デバイスフリーでの展開(スマートウォッチ等も活用)を進めていることを明かしました。


第2部:プロジェクト成果報告

 

今年度採択された6つのプロジェクトより、スタートアップと基盤提供者(事業会社)が登壇し、実証実験の成果を発表しました。

  1. 株式会社Nefront × 東京建物株式会社

ARを活用した複数棟ビルの効率的な集中管理

登壇者: 今村 翔太 氏(株式会社Nefront 代表取締役CEO)

プロジェクト概要: ビル管理業界では、1つの建物を常駐管理する形態から、エリアごとの「多棟管理」へと移行しつつあります。しかし、管理者の知識不足や情報の属人化が課題でした。Nefrontは、空間情報管理システム「IndooAR」を用い、これらの課題解決に取り組んでいます。

QRコードで屋内位置情報を特定し、AR(拡張現実)で空間に点検メモや設備情報を表示する技術を用い、東京建物日本橋ビルにて実証を行っています。Excelや紙で管理されていた情報を空間に紐づけることで、不慣れなスタッフでも直感的に点検業務が可能になることを確認し、今後は既存のBIMデータや点検システムとの連携強化を目指します。このシステムにより、知識の属人化を防ぎ、効率的な多棟管理を実現する基盤が整いつつあります。

コメント: 東京建物の中井氏は、「理屈では可能でも実際にはできていない、現場の人に使ってもらう泥臭い部分をNefrontが担ってくれた」と評価しました。

 

  1. 株式会社ジオクリエイツ × 株式会社フジタ

空間評価によるウェルビーイング向上(バイオフィリックデザイン)

登壇者: 本田 司 氏(株式会社ジオクリエイツ 代表取締役)

プロジェクト概要:「フジタ技術センター付属棟」において、建設中のBIMのVR(仮想現実)において視線脳波解析ツール「ToPolog(トポログ)」、竣工後の現地においてリストバンド型センサー等による生体データと位置情報の解析ツール「GISTA(ジスタ)」を用い、フジタの取り組む木材や緑を取り入れた「バイオフィリックデザイン」が人の心理に与える影響を定量化しました。

VRによりる予備実験で計測する座席を決めた上で、竣工後の現地で一般被験者にリストバンドや脳波計を装着して計測した結果、窓際や木材越しに外が見える場所でリラックス効果が高く、木材の壁面や複雑な空間では集中効果が高い傾向が確認されました。発表スライドでは竣工後の現地における各座席の実測によるレーダーチャートや視線推定AIによるヒートマップによる分析結果の一覧を示し、設計段階のBIMデータを用いたVR検証でより詳細に木材などの建材を張り替えて検証することで、竣工前の設計段階で効果測定が可能であることも実証しました。

これにより、感覚的だったデザインの効果を定量的なエビデンスとして提示できるようになりました。

コメント: 株式会社フジタの西原氏は、建物の高付加価値化においてウェルビーイングが不可欠であるとし、今後は社内の建築士への展開や実プロジェクトでの活用を進める意欲を示しました。

 

 

 

 

  1. 株式会社ジオクリエイツ × 大和リース株式会社

オフィス緑化ソリューション「VERDENIA」の効果測定

登壇者: 本田 司 氏(株式会社ジオクリエイツ 代表取締役)

プロジェクト概要: 大和リースのオフィスリニューアルに合わせ、緑化配置が従業員の「集中」と「リラックス」にどう影響するかを、リストバンド型センサーと位置情報を組み合わせた「GISTA(ジスタ)」で計測しました。

リニューアル前後2週間ずつの計測データを比較分析し、「遠くの緑は集中力を向上させ、近くの緑はリラックス効果を高める」という傾向がみられました。マッピング図を用いた分析により、オフィスレイアウトの変更と緑化導入が従業員のウェルビーイングに寄与していることが確認されました。この結果に基づき、例えば、「遠景となる集中エリアには緑を配置する」といったデータに基づく空間デザインの提案が可能となりました。

リストバンド型センサーの長期間の計測に加えて、「ToPolog(トポログ)」の感情推定AIを用いて短時間で様々なオフィスレイアウトの指標化も試行し、時間が限られる営業のゆ提案時にも活用できる総合的なソリューションになっていることも確認しました。

コメント: 大和リースの金井氏は、「これまで感覚的だった緑化の効果をエビデンスとして提示できるようになった」とビジネス面での有効性を強調しました。

 

 

 

 

 

 

  1. 株式会社comvey × 株式会社生活の木

リユース梱包「シェアバッグ」による脱炭素推進

登壇者: 梶田 伸吾 氏(株式会社comvey 代表取締役)

プロジェクト概要: EC配送のダンボールゴミを削減するため、ポスト投函で返却・再利用可能な梱包材「シェアバッグ」を、アロマ専門店「生活の木」のオンラインストアに導入しました。

ユーザーがECサイトで「シェアバッグ」を選択し、返却すると次回使えるクーポンやCO2削減量が表示される仕組みを構築し、スムーズな顧客体験を実現しました。生活の木の主力商品であるアロマオイル等を安全に運ぶためクッション内蔵型の新バッグを開発するとともに、メンテナンス業務を障がい者雇用施設に委託することで社会的意義も創出しています。

コメント: 生活の木の中村氏は、「顧客のエシカル意識が高く、ダンボール廃棄への罪悪感という課題があった。導入後は、「シェアバッグ利用者のダンボール廃棄のストレス解消や、満足度向上、リピート購入率の増加などを狙っていく方針」と報告しました。

 

 

 

  1. 株式会社komham × NTTアーバンソリューションズ総合研究所 / 品川シーズンテラス

都市型ビルにおける生ゴミの高速堆肥化・循環

登壇者: 宮内 友子 氏(株式会社komham 営業)

プロジェクト概要: 品川シーズンテラスの飲食店から出る生ゴミを、微生物群「コムハム」を用いた自立駆動型処理機「スマートコンポスト®」で処理し、都市内での資源循環モデルを検証しました。

ソーラー駆動の「スマートコンポスト®」を用い、微生物の力で生ゴミを最短1日で最大98%減容する技術を実証しましたが、実証期間中は撹拌機構の課題により分解率は68.5%にとどまりました。

しかし生成された堆肥は成分分析の結果問題なく植栽に活用可能であり、屋外の目立つ場所に設置したことで多くの企業や自治体から見学希望が殺到するなど高いPR効果を得ました。

現在は改良機による追加検証を行っており、都市のゴミを都市の資源として循環させるモデルの確立を目指しています。

コメント: NTTアーバンソリューションズ総合研究所の上田氏は、「都市のゴミを都市の資源として循環させるモデルを作りたい」と述べ、テナントや地域住民を巻き込んだ取り組みへの意欲を示しました。

 

 

 

 

  1. 株式会社GOYOH × 株式会社プロフィッツ

施設利用者のQOL計測・改善とインパクト投資への接続

登壇者: 伊藤 幸彦 氏(株式会社GOYOH 代表取締役)

プロジェクト概要: 都内の11物件(保育園、賃貸住宅、ホテル、オフィス)を対象に、ツール「インパクトチェッカー」を用いて利用者のQOLや社会的な活動データを可視化。これを不動産の経済的価値と相関させ、金融評価につなげる取り組みを行いました。

「インパクトチェッカー」を用いて入居者や利用者のQOLデータを可視化し、不動産の経済的価値と社会インパクトの相関分析をおこない、ステークホルダーと連携した運営改善によるインパクトの創出と循環を行います。この取組みと連携して、三菱UFJ銀行がプロフィッツの「QOLファンド」に対して国内初となる不動産の社会インパクトをベースにした投融資とモニタリングを実行するという画期的な事例も実現しました。現在は国土交通省や海外イニシアティブとも連携し、建物単体だけでなくコミュニティや都市といったスケールでも不動産のソフト価値を資産価値や政策決定に組み込むためのルールメイキングを推進しています。

コメント: プロフィッツの石田氏は、「最初はテナントや事業者が抱える課題解決を通じた独自の価値向上戦略だったが、結果として社会的インパクトも同時に創出している可能性を評価いただいた。今後の活動を通じて、テナント・関連事業者・投資家・金融機関等のステークホルダーからのさらなる評価向上に繋げていきたい」と期待を述べました。

 

 

 

コメンテーターの皆様

(左から 川島 令 氏 、ポチエ 真悟 氏(Shingo Potier de la Morandière) / PwCコンサルティング合同会社 シニアマネージャー フューチャーストラテジスト、太田良 けいこ 氏 / 一般社団法人 XRコンソーシアム  エグゼクティブ・ディレクター)

 

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クロージング

会場では「環境・ウェルネス・不動産」という、短期的な収益化が難しいとされる領域において、各社がデータの可視化やエビデンスの構築に尽力し、着実な成果を上げている点が高く評価され、イベントは盛況のうちに幕を閉じました。