CIC Tokyoのエントランスに、かつて見覚えのあったプロダクトが戻ってきた。
WOTA社の水循環型手洗いスタンド「WOSH」だ。
| 2020年、WOTAはCIC Tokyoに入居しており、エントランスにも「WOSH」を設置していた。その後、事業の成長とともにCICを卒業したWOTAが、今回再びCIC Tokyoに接点を持つことになった。 背景にあるのは、2025年からCIC Tokyoに入居する住電商事株式会社(以下、住電商事)とWOTAとの販売提携だ。 住電商事はWOTAと契約を結び、民間向けのマーケティングとセールスを担う販売パートナーとなった。いわば、WOTAの製品を市場に届ける役割を担う。かつてCICに入居していたスタートアップと、現在入居する企業。両者の接点は、どのようにして生まれ、どのようなビジネスの可能性につながっているのだろうか。 |
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住電商事は、企業間取引(BtoB)を中心に、インフラ関連をはじめとする技術力を重視した商材を扱ってきた専門商社だ。そこに、スタートアップが開発した製品のマーケティングやセールスを担うという、新しい役割を加えることになる。
「これまでとは違うことをやってみよう」という社内の機運が高まっていたことが、一つの背景にあった。そして、WOTAが取り組む水インフラという領域には、住電商事がこれまで培ってきたインフラ事業における強みも活かせた。
スタートアップの技術と、住電商事が持つ販売・マーケティングの力。両者を組み合わせれば、単に「面白い技術を見つける」だけではなく、その技術を実際の市場へ届けるところまで、一緒に取り組めるのではないか。
こうして、WOTAと住電商事の販売提携が始まった。
そもそも住電商事がCICに入居したのは、特定のスタートアップとの協業を目的にしたものではなかった。
住電商事・高城さんがCICに来たのは、マーケティング部門への異動と同じタイミング。それ以前には、再生可能エネルギー関連の社内横断プロジェクトにも携わっていた。
CICへの入居時に与えられていたのは、明確な一つのミッションというより、「外の世界を見て、人脈をつくり、新しいものを社内に持ち帰る」という役割だった。
そこで高城さんは、CICのテナント企業を訪ね、イベントに参加し、必要に応じてキャンパスチームにも紹介を依頼した。面談で得た情報は社内にも共有した。
CICにいることで感じたメリットの一つが、普段の社内業務から少し距離を置き、自社を客観的に見られることだったという。
一方で、通常業務との両立は簡単ではない。マーケティングだけでなく、営業や間接部門にまたがる仕事を担うなかで、CICの環境を十分に活用できないはがゆさも感じたという。
それでも、自ら動けば、これまで接点のなかった企業やコミュニティとつながることができる。その環境から生まれた接点の一つが、WOTAとの販売提携だった。
スタートアップと大企業の協業というと、PoCや技術検証を思い浮かべることが多い。
住電商事がWOTAとの販売提携で取り組んでいるのは、その先にある「市場に届ける」という仕事だ。
WOTAにとっては、自社で販売やマーケティングの人員を大きく抱えることなく、住電商事が持つ顧客基盤や商流を活用できる。一方、住電商事にとっては、従来の商社機能に加えて、スタートアップの製品を市場に送り出す新しいビジネスモデルへの挑戦となる。
もちろん、販売提携を始めればすぐに売れるわけではない。
新しい製品を企業に提案するには、その技術が優れているだけでは足りない。誰の、どのような課題を解決するのか。既存の業務フローのどこに組み込めるのか。最終的に注文につながるところまで、具体的な提案に落とし込む必要がある。
だからこそ、住電商事が持つBtoBの営業やマーケティングの経験が生きてくる。
WOTAとの販売提携は始まってまだ約半年。実務面では、販売方法や社内での進め方など、調整すべきことも残っている。
それでも、この取り組みは一つの製品を販売するだけの話ではない。
住電商事がこれまで培ってきた「技術力の高い商材をお客様に届ける力」を、スタートアップとの協業に生かす。その可能性を探る取り組みでもある。
CICを起点とした住電商事の接点は、WOTAだけではない。
CICから巣立っていった他の企業との間でも、親会社の住友電工の製品を介した協業が進んでいるという。
CICを出たら関係が終わるのではない。
そこで生まれた接点が、別の企業との取引や協業につながり、時間を経て新たな関係を生み出していく。
今回、CICのエントランスに再び置かれた「WOSH」は、その象徴ともいえる。
2020年にはWOTA自身がCICに入居し、その製品がエントランスに置かれていた。2025年からは住電商事がCICに入居し、WOTAの製品を市場に届ける側として関わる。そして今、その「WOSH」が再びCICを訪れる人たちを迎えている。
CICで生まれる価値は、出会いそのものではない。
出会いをきっかけに、企業と企業がそれぞれの強みを持ち寄り、新しいビジネスへとつなげていくこと。その先に、また新たな出会いが生まれていくこと。
「WOSH」が戻ってきたCICのエントランスには、そんなスタートアップと企業の関係の変化が、小さな一台のプロダクトを通して表れている。


