2026年8月24日、虎ノ門のイノベーションキャンパス「CIC Tokyo」(15階 Venture Café )にて、CICの国内3拠点に入居する全国13の自治体が登壇するリバースピッチイベントが開催されました。北関東から九州まで、人口規模も産業構造も異なる自治体の担当者が登壇。各地域の重点施策や支援メニュー、実証フィールドに加え、「いま本気でスタートアップと共創したいこと」を、集まったスタートアップや事業会社に向けて熱く語りかけました。当日は約120名が現地参加し、ピッチ後の展示ブースを中心に活発なネットワーキングが行われました。
| イベント名 | 自治体リバースピッチ -地域とつながる、未来が広がる- Municipalities’ Pitch powered by CIC |
|---|---|
| 日時 | 2026年8月24日(月)17:30〜20:00 |
| 会場 | CIC Tokyo(東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー15階)Venture Café |
| テーマ | 自治体が抱える地域課題・重点施策の提示と、スタートアップ/事業会社との共創機会の創出 |
| 主催 | CIC Catalyst APAC |
| 登壇自治体 | 宇都宮市/栃木市/壬生町/東京都/静岡県/豊橋市/京都市/東大阪市/神戸市/福岡県/福岡市/大分県/熊本市(全13自治体) |

通常のピッチイベントでは、スタートアップが投資家や事業会社に向けて自社の事業を語ります。一方「リバースピッチ」は、その向きを反転させ、課題やリソースを持つ自治体が「私たちが抱える課題」や「提供できる支援・実証フィールド」を公開し、共創パートナーを直接募集する形式です。
自治体との連携に関心を持つスタートアップは多いものの、「どの自治体が何を求めているのか」「どこが窓口なのか」といった情報は分散しており、最初の接点づくりが高いハードルとなっていました。
本イベントは、その接点を一晩で13自治体分まとめて創出することを目指した取り組みです。2024年夏から毎年CIC Tokyoで開催され、CIC入居自治体とイノベーションコミュニティ(スタートアップ、事業会社、行政、大学、投資家等)をつなぐ場として回を重ねてきました。
3回目を迎えた今回は、CIC Tokyoに加えて「CIC Fukuoka」や「O-Nexus」に入居する自治体も新たに参画。各自治体による3分間のピッチに続き、展示・飲食スペースでの交流会へと移り、日本各地の自治体と参加者との間で熱度の高い対話が繰り広げられました。
1. 宇都宮市|「共創に本気のまち、うつのみや。」 東京オフィス 副所長 間中 美徳 氏

都心から新幹線で48分というアクセスの良さと、農・工・商のバランスが取れた豊かな産業構造が特徴の都市です。約28,000人の研究開発人材や新設されたLRT(次世代型路面電車)などの地域アセットを網羅しており、多様な実証実験のフィールドとして活用できます。子育てや環境をはじめ多様な地域課題を抱えており、自社の技術やサービスを生かした具体的な共創提案を募集しています。また、企業版ふるさと納税を通じた宇宙産業の推進や、11月開催の「宇宙科学技術連合講演会」の開催も呼びかけました。
2. 栃木市|「人もデータも集まる『まち』、栃木県栃木市」 栃木市東京サテライトオフィス 所長 野尻 博之 氏

都心からのアクセス性に優れ、蔵の街並みや豊かな自然、スカイスポーツなど、様々な地域資源を有する人口約15万人の都市です。2028年度操業予定の大型データセンターや、平川産業団地における食品製造業の優先誘致など、未来に向けた変化が進んでいます。東京サテライトオフィスを軸にスタートアップ等との「共創」を精力的に推進しており、企業の皆さまと取り組みたいテーマとして、「DX・業務効率化・職員育成」「経済・産業・雇用」「少子高齢化対策・多文化共生」を掲げています。栃木市を挑戦の場として活用し、ともに進化を加速させるパートナーを募りました。
3. 壬生町|「壬生町を共に元気に!挑戦者求む!」 壬生町東京サテライトオフィス 所長 落合 正浩 氏

おもちゃ関連施設が集まる「おもちゃの町」や徳川家ゆかりの歴史を持ち、穴場観光先としても人気の高い自治体です。開設5周年を迎えた東京サテライトオフィス(CIC Tokyo内)を拠点に発信を続け、メディア露出や道の駅の売上増加など着実な成果を上げています。一方で、コロナ禍以降休止している公営プールの再開発といった課題も抱えています。プール跡地の利活用をはじめ、地域の活性化や課題解決に向けて新しい取り組みに果敢に挑戦してくれるスタートアップなどの参画を呼びかけました。
4. 東京都|「行政がスタートアップのファーストカスタマーになるために」~東京都と一緒に挑戦したいスタートアップを募集します~ 東京都スタートアップ戦略推進本部 主事 長谷川 颯大 氏

スタートアップの製品やサービスを行政が率先して導入する「ファーストカスタマー」の取り組みを推進しています。協働件数は2022年から昨年度までの3年間で約47倍に増加、2035年までに1,000件を目指しています。本取り組みの推進エンジンとして、「現場対話型スタートアップ協働プロジェクト」「課題即応型官民協働ブーストアップ事業」「UPGRADE with TOKYO」「スタートアップによる事業提案制度」の4制度を紹介。また、スタートアップ情報を自治体間で相互活用する「ファーストカスタマー・アライアンス」には30自治体が参画し、認定後も全国の公共調達に参入しやすくなる仕組みづくりも進んでいます。さらに、10月14,15日にTIBで開催する水素関連展示会の出展企業募集を案内しました。
5. 静岡県|「つながりの仕事術:地域とスタートアップのマッチング&コミュニケーション」 スタートアップ支援専門人材 佐谷 恭 氏

スタートアップ支援専門人材として、スタートアップと地域(企業・自治体)を深く「つなぐ」支援に注力しています。最大4,000万円を交付する静岡県ファンドサポートや、1.4万人規模のイベント「TECH BEAT Shizuoka」などを通じて活発な交流を創出。さらに、県内の事業者や自治体とオンラインで直接対話できる「共創オープンダイアログ」を展開しており、静岡県の豊富なリソースや資金を活用した地域での事業展開・共創提案を呼びかけました。
6. 豊橋市|「農家・企業の声から始まる、共創と実証のまち豊橋」 豊橋市役所 地域イノベーション推進室 主事 竹内 萌 氏/主査 桑原裕明 氏

全国トップクラスの農業産出額と盛んな工業を併せ持つ強みを活かし、「地域農業」の座組で共創事業「TOYOHASHI AGRI MEETUP」を展開しています。農家の抱える課題をサイトに公開し、賞金総額1,000万円のコンテストで解決案を募るアグリテックコンテストを紹介しました。共創事例として、自律走行ロボットの実用化を目指す取組みなど、手厚い伴走支援を紹介しました。また、「スタートアップ×地域事業者」の視点から、地域企業のニーズと全国のスタートアップをマッチングするプラットフォーム「とよはし共創ラボ」も展開しており、農業に限らず多様なフィールドでの実証と事業提案を呼びかけました。
幕間:CIC Catalyst/CIC Tokyo/O-Nexus/CIC Fukuoka のご紹介

前半6自治体のピッチを終えたところで、会場を提供するCICの紹介が挟まれました。1999年に米国で創業したCICは、世界主要都市で展開するイノベーション拠点で、スタートアップや事業会社、VC、大学、自治体が集うエコシステムを形成しています。スタートアップ成長支援を担う「CIC Catalyst」からは、アクセラレーションプログラムや実証事業などディープテックやグローバル支援に強みを持つ取り組みについてお伝えしました。

続いてコミュニティチームより、約350社が利用するCIC Tokyoの活用法として、入居者同士のイベント開催や自治体主導のイベントを通じた活発な交流が紹介されました。

さらに、国内他拠点からも登壇。2026年5月に開設された大阪・中之島の「O-Nexus」は、ライフサイエンス領域に特化した関西唯一のハブであり、約80社が集積している現状が共有されました。また「CIC Fukuoka」は、開業2年目で160社以上を迎え、自治体との連携プランなどを通じてアジアを見据えた西日本のイノベーションを牽引している点がアピールされました。各拠点の強みと、地域や領域を超えて連携を生み出すCICネットワークのポテンシャルを共有しました。

7. 京都市|「1,000年先の未来を紡ぐ、京都発ソーシャル・イノベーションのかたち」~京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)の挑戦~ 京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)イノベーション・コーディネーター 玉岡 佑理 氏

「1,000年前と今日が、あたりまえに隣り合う」「多様なものを受け入れる『余白』がある」。京都というまちの性質を、そのまま支援機関の設計思想に翻訳したのがSILKです。掲げるのは、課題を解決するだけでなく「社会課題を生み出さない社会をつくる」という一段手前への働きかけ。特徴は、外部専門人材によるイノベーション・コーディネーターの配置、創設以来続く「これからの1,000年を紡ぐ企業認定」コミュニティ(131社)を活用した伴走支援、そして京都企業や公的機関とのマッチングを担う「関係性案内所」の3つ。京都の豊かな土壌や余白を活かした共創やイベントへの参画を呼びかけました。
8. 東大阪市|「5,500社のモノづくりネットワークで社会実装の加速化に貢献!」 東大阪市産業創造勤労者支援機構 医工連携アドバイザー 嶋田 拓生 氏

5,500社が集積する日本一のモノづくりの街として、「歯ブラシからロケットまで」手掛ける高度な技術力を誇ります。新たに大阪・中之島の「O-Nexus」内に『東大阪モノづくり相談窓口』を開設。街全体を一つの工場に見立て、1社では解決できない高難度の試作や開発課題を企業間の強力なネットワークで受け止める、絵本『スイミー』のような協働モデルを構築しています。「単発試作や相見積もりも大歓迎」と間口を広げ、自社に試作環境を持たないスタートアップへ積極的な相談と連携を呼びかけました。
9. 神戸市|「神戸市の共創によるイノベーション創出の取組み」 神戸市東京事務所 新戦略担当 鷲尾 みなみ 氏

国内最大級の医療クラスター「神戸医療産業都市」を核に、航空・宇宙、水素といった成長産業が集積する港町です。2027年の「アイパーク神戸」開設をはじめ、新たなイノベーション創出が期待されています。「ひょうご神戸スタートアップエコシステム・コンソーシアム」に基づくスタートアップ支援環境の整備や、日本唯一の「Microsoft AI Co-Innovation Lab」など先進的な環境を完備。行政課題型と自由提案型で実証を支える「Urban Innovation KOBE」や、首都圏企業とのマッチングを図る「OPEN NEXUS KOBE」を展開しています。西日本拠点の設置やPoCの場を求めるスタートアップへ向け、積極的な対話と連携を呼びかけました。
10. 福岡県|「福岡県のスタートアップ支援について」 プロジェクトマネージャー 中土 真輝 氏

スタートアップ支援拠点である「グローバルコネクト福岡」において、スタートアップ等の成長を総合的に支援。資金調達支援では、毎月第3木曜日の「F★Pitch」や台湾大手VC・NVIDIA等と連携した「Global Connect Spark Day」を開催し、ビジネスマッチングを実施。登録者1,000人超の「福岡県CXOバンク」による人材マッチングや、半導体・バイオ・宇宙などの各支援組織へ繋ぎ、研究開発助成などを支援しています。グローバルコネクト福岡が中心となり、大きな資金調達やグローバルなビジネスマッチングを生み出し、グローバルなスタートアップエコシステムの形成を目指していることを伝えました。
11. 福岡市|「福岡市公民連携ワンストップ窓口mirai@ 未来をつくるアイデアを一緒に。」 福岡市経済観光文化局 創業推進部 森川 真伍 氏

2018年に設置した公民連携ワンストップ窓口「mirai@(ミライアット)」では、多様なスタートアップ支援を展開しています。相談や提案の受付から実証フィールドの調整、国家戦略特区を活用した規制緩和提案まで幅広くサポートし、これまで200件以上のプロジェクトを実施。mirai@では、衛星データを用いた水道管漏水調査のように、効果が認められた技術を公共調達へつなげるスキームも完備しています。福岡市における実証実験や市への進出を見据えた提案・相談を呼びかけました。
12. 大分県|「CICへの職員派遣を通じて大分県が目指すスタートアップエコシステムとは」 CIC Fukuoka コミュニティチーム 別所 宏朗 氏(大分県)

日本一の温泉資源を地熱発電やコスメ、アグリテックなど多角的に活用する独自の強みを有しています。Jカーブを目指すスタートアップに加え、アトツギや社内起業家、社会起業家まで「あらゆる挑戦者」を幅広く支援。実証フィールドの提供や官民連携ファンドの創設を通じ、県外・海外との連携を推進しています。CIC Fukuokaのコミュニティチームの一員としても活動する別所氏より、参入余地豊かな大分県のエコシステムと外部をつなぐ窓口として積極的な連携を呼びかけました。
13. 熊本市|熊本地震からの復興と、秋の熊本へのお誘い 熊本市東京事務所 堀田 優里 氏

最後に、熊本市が特別登壇し、7月に発生した熊本地震について全国から寄せられた支援への感謝が述べられました。そのうえで訴えられたのは、いま最も深刻なのが風評被害だということ。宿泊キャンセルは県内全体で27億円規模にのぼっています。国からも「九州応援割」の準備が進むなか、呼びかけられたのは「熊本に足を運んでの支援」でした。10月3〜4日の「お城EXPO in 熊本」と連動企画「肥後の楽市楽座」、水前寺成趣園をライトアップする「華咲く水鏡 Lux Night KUMAMOTO 2026」、10月6日の「スタートアップワールドカップ九州予選」。「買って、食べて、ご支援いただけると嬉しいです」という率直な言葉に、会場は温かい拍手を送りました。

ピッチセッションが終わると、会場のNIJIルームおよび後方スペースは熱気あふれる交流の場へと一変。各自治体のブースには多くの参加者が詰めかけ、3分間の発表だけでは伝えきれなかった支援策の全貌や具体的な実証条件をめぐり、深みのある対話が遅くまで交わされました。
自治体とスタートアップの連携の起点は、公募情報だけではありません。「この人に相談すればいい」という顔の見える関係が最初の一歩となり、そこから実証、そして本格的な事業連携へと繋がっていくことも多くあります。この夜、13の自治体がそれぞれの門戸を開き、課題も、フィールドも、担当者の顔も、まとめてオープンになりました。会場のあちこちで生まれた熱い対話は、まさに新たな共創の芽が芽吹いた瞬間と言えます。
CICは、今後も自治体をはじめとするステークホルダーとともに、スタートアップ・エコシステムを構築する「触媒(Catalyst)」として、地域と挑戦者が出会う場をつくり続けていきます。