イベント情報

【開催レポート】MOBILITY FUTURES NIGHT YOKOHAMA 2026 #02 ― 移動で変わるまちづくりと、モビリティデータの利活用最前線へ

August 21, 2026

2026年8月5日、TECH HUB YOKOHAMAにて、モビリティ領域のイノベーションと次世代都市の未来を議論するハイブリッドイベント「MOBILITY FUTURES NIGHT YOKOHAMA 2026 #02」を開催しました。本イベントでは、「移動で変わるまちづくりと、その背景にあるモビリティデータの利活用はどうあるべきか」という問いを出発点に、地方自治体が直面する公共交通の危機に対する「ライドシェア」や「自動運転」の実装戦略、およびWeb3やDePINといった新しい概念を用いた分散型モビリティデータの可能性について、最前線で活躍する実践者たちを招いて熱い議論が交わされました。

 

イベント概要

開催日 2026年8月5日(水)19:00〜20:00(20:00〜20:30は現地ネットワーキング)
会場 TECH HUB YOKOHAMA(神奈川県横浜市西区みなとみらい2丁目2番1号 横浜ランドマークタワー)および オンライン
主催 CIC Catalyst APAC、横浜市
主なテーマ 地方交通、スマートシティ、ライドシェア、モビリティデータ利活用、DePIN (Decentralized Physical Infrastructure Networks)、自動運転、フィジカルAI

当日は、TECH HUB YOKOHAMAの現地会場およびオンラインを合わせ、モビリティ領域のスタートアップ、大企業の新規事業担当者、地方自治体関係者など、多様なプレイヤーにご参加いただきました。登壇者によるクロストークでは、Software Defined Vehicle(SDV)の普及やMaaSの進化など、都市とリアルタイムに繋がるデータプラットフォームとしてのモビリティの未来像について、多角的な議論が展開されました。

 

登壇者紹介

池上 明子 氏 / (一社)全国自動車移動連絡協議会 – 理事、(株)自治体総合研究所 – 代表取締役
自治体職員、デジタル庁を経て、現在は一般社団法人全国自動車移動連絡協議会(旧 全国自治体ライドシェア連絡協議会、2026年7月改称)理事兼事務局長として、地域交通及び自治体AX分野を中心に活動している。国や自治体、交通事業者、大学研究者そして全国の知事・市区町村長等と連携しながら、「交通空白」の解消と持続可能な地域交通のリ・デザインに取り組み、具体的には、公共・共助版ライドシェア、自動運転、データ活用を通じた新たな移動サービスの導入支援を行っている。自動車移動をより自由にすることが、子ども・高齢者、そして働く世代の豊かなくらしと、諦めない生き方につながると確信し、全国各地の現場で移動課題の解決に現場の皆さんとともに挑んでいる。現場起点の実践者であり、直近では、東京大学大学院情報理工学系研究科で「データサイエンス本格養成プログラム」を学びながら、クルーズ船寄港地における二次交通をテーマとした研究論文が日本クルーズ&フェリー学会誌に掲載されるなど、実務と学術の双方から政策提言を続けている。


林 亮 氏 / DIMO Japan – CEO
通信業界でキャリアをスタートさせた後、自動車業界へと転じてアフリカにおける中古車流通およびマイクロファイナンス事業の立ち上げを経験。Web3テクノロジーと自動車の接点を模索する中で、米国ニューヨーク発のWeb3スタートアップである「DIMO」に出会い、博報堂キースリーとのジョイントベンチャーとしてDIMO Japanを設立。


【モデレーター】川端 由美 氏 / 電動モビリティシステム専門職大学 准教授 ジャーナリスト・ストラテジスト
群馬大学大学院・工学専攻・博士課程前期修了。住友電気工業にて、デザインエンジニアとして研究開発に関わるも、自動車好きがこうじて、自動車雑誌『NAVI』の編集記者に転身。後に、『カーグラフィック』編集部に転属。欧州系戦略コンサルティング・ファームにて、イノベーションを推進するプロジェクトを手がける。現在は、ジャーナリスト活動と同時に、企業の戦略イノベーションを推進する。デジタル庁(臨時行政調査会など)、内閣官房(道路交通WG)、内閣府、経済産業省(自動走行ビジネス検討会)国交省(MaaS懇談会など)、警察庁(第二種免許制度など)、環境省有識者委員、国土交通省独法評価委員会委員などを歴任。国際カンファレンス、メディア出演多数。2023年4月から本学にて教鞭を取る。

 

セッションの内容総括

1. オープニング・プロジェクト背景:横浜から始まるモビリティ領域のイノベーションと「フィジカルAI」コミュニティの構想
CIC Catalyst APACと横浜市は、2026年度よりTECH HUB YOKOHAMAを拠点としたモビリティ領域のイノベーション・コミュニティ形成事業を開始しました。市内の企業連携を促進し、業界特化型の「モビリティ・クラスター」構築と、今年度4回のイベントを通じた中長期的なコミュニティ形成を目指しています。
CICは、世界各地のイノベーション都市に拠点ネットワークを構築しており、国内では東京、福岡、大阪に拠点を有しています。本取り組みでは、こうした国内外のネットワークを活用し、モビリティにとどまらず、ロボティクスや半導体などの関連領域も含めた「フィジカルAI」分野の多様なプレイヤーがつながるコミュニティの形成を目指します。

CIC Japan 会長 梅澤 高明 氏による挨拶

CIC Japan 会長 梅澤 高明 氏による挨拶

 

2. 第1部 Session 1「まちづくりにおける移動の重要性」:地方交通の危機と自動運転を見据えた「ライドシェア」の実装戦略
Session 1では、全国自動車移動連絡協議会の池上明子氏とモデレーターの川端由美氏が登壇し、地方都市が直面する公共交通の維持問題や、住民目線での移動の価値について語られました。
セッションでは、地域ごとの多様なライドシェア実装事例が共有されました。

  • 大分県別府市:観光客の二次交通やオーバーツーリズム対策として、地元タクシーと共存する「公共ライドシェア」を展開。
  • 京都府舞鶴市:住民主体で軽トラックを活用する、生活の足を守るライドシェア。
  • 静岡県河津町:イベント時の移動空白を解消する、法外の「共助版ライドシェア」実証。
  • 日常支援:高齢者の移動確保や子どもの送迎など、多様なニーズへの対応。

また、米国西海岸の視察では、データに基づく徹底した住民支援が印象的でした。ウエストサクラメントでは所得データを活用し、特定エリアへの移動手段提供で自立支援を行っています。シアトルでは公共交通がシステム統合され、市民視点でのデータ活用がなされています。
さらに、サンフランシスコの自動運転車「Waymo」は高い社会受容性を示しており、治安面での信頼から人による運転より安心との声もあります。川端氏はドイツの事例を挙げ、ライドシェアで公共交通の利便性を補完し、利用率を向上させるアプローチを紹介しました。
池上氏からは、日本における「自動運転の量産化(2年後を目途)」への備えとして、「今すぐ各自治体がライドシェアを導入すべきである」との強い主張がなされました。技術が優れていても、地域の交通事業者との信頼関係がなければ自動運転は導入できません。今からライドシェアを通じて地域のタクシー事業者等と膝を突き合わせて話し合い、移動を「地域の共通の供給力」としてデザインする信頼関係(社会受容性)と、広域的なデータ連携基盤を構築しておくことが極めて重要であると解説されました。

左から電動モビリティシステム専門職大学 准教授 ジャーナリスト・ストラテジスト川端氏、(一社)全国自動車移動連絡協議会 池上 氏

左から電動モビリティシステム専門職大学 准教授 ジャーナリスト・ストラテジスト川端氏、(一社)全国自動車移動連絡協議会 池上 氏

 

3. 第2部 Session 2「DePINとスマートシティ、その社会実装」:ブロックチェーンと標準化データが拓くモビリティの未来
Session 2では、DIMO Japanの林亮氏と川端氏により、ブロックチェーンを基盤とした新たなデータ流通の概念「DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Networks)」と、スマートシティにおけるその社会実装について語られました。
林氏は「DePIN」の概念を、「大企業が中央集権的に構築してきたインフラを、トークンエコノミーなどのインセンティブを用いて、ユーザーや市民自らがステークホルダーとなり分散型ネットワークとして共創・管理する動き」であると説明しています。現在のモビリティ業界における最大の課題は、蓄積される車両データがメーカーやサービスごとに「縦割り・ぶつ切り状態」になっており、イノベーションが阻害されている点にあります。
DIMOはこの課題に対し、物理的な自動車と1対1でペアとなる「改ざん不可能なデジタルツイン」をブロックチェーン上に生成します。これにより、メーカーの独自の仕様に依存することなく、車両の走行距離、バッテリー状態、タイヤ空気圧などの細かなデータを標準化された共通のレイヤー上で管理し、安全に取引・利活用できるようにします。すでにテスラ車を所有する日本のドライバーは、DIMOアプリを介して自身の愛車とプラットフォームを接続することが可能です。
具体的なユースケースとして、以下のような先進的事例が紹介されました。

  • EVのCO2削減の可観測性とカーボンクレジット(米国):EVの充電データから、その電力が火力・再生可能・原子力のいずれに由来するかを分析・可視化し、削減されたCO2をトークン化して直接カーボンクレジット市場へ接続するアプリケーション。
  • 柏の葉スマートシティでの実証実験(三井不動産協働):巨大マンション群の居住者の車両をDIMOに接続し、住民のモビリティ活動データを塊として可視化。これまでデベロッパーにとってブラックボックスだった地域住民の移動実態をデータ化することで、将来的な自動運転バスの最適ルート設計やインフラ投資の意思決定の基礎データ(EBPM)として活用する取り組みを進めています。

林氏は、標準化されたデータ基盤とAPIが整うことで、開発者が独自のクリエイティビティを発揮して様々なアプリケーションを即座に構築できるようになる点に、極めて強力な技術的ジャンプがあると強調しました。

左からDIMO Japan林氏、(一社)全国自動車移動連絡協議会 池上 氏

左からDIMO Japan林氏、(一社)全国自動車移動連絡協議会 池上 氏

 

4. 第3部 クロストーク&総括:課題意識から始まるデータの価値化と、持続可能な地域社会の共創へ
後半のクロストークでは、モビリティデータの利活用について議論が展開されました。
池上氏は、別府市でのクルーズ船寄港データと売上を掛け合わせた研究事例を紹介し、「解決したい明確な目的があって初めてデータは可視化され意味を持つ。これに基づき二次交通や受け入れ体制といった具体的な政策立案が可能になる」と説きました。
林氏もこの考えに賛同し、「目的先行でデータ活用を考えることが重要であり、DIMOは開発者が技術的障壁なく課題解決に集中できる共通レイヤーを提供したい」と強調しました。
セッションの締めくくりとして、登壇者から地域社会の未来に向けたメッセージが発信されました。
池上氏:「最も重要なのは、移動や交通の課題を行政から降ってくるものではなく、住民自身が『我がこと』として捉え、人と人のコミュニティ、そして自分たちの街をどうしたいかを真剣に考えること。これからの1〜2年は、そのコミュニティ作りと地ならしが最も重要になる。横浜の地から、このような先進的な協働事例を皆さんと一緒に作っていきたい」
林氏:「データを扱うための標準化や技術的な基盤は整いつつある。その上で何を実現するかは、私たち人間のクリエイティビティに委ねられている。本日ここにお集まりの志ある方々と、モビリティを起点とした新しい社会価値の創出について、ぜひ具体的な対話を深めていきたい」
モデレーターの川端氏は、「移動、データ、まちづくりは別々のものではない」と総括。過去のように縦割りで個別最適化する時代は終わり、ひとつの明確な目的のもと、すべてのセクターが一体となってリ・デザインすることで初めて、持続可能な地域交通と次世代スマートシティが実現します。TECH HUB YOKOHAMAは、単に議論を交わすだけの場所ではなく、行政、企業、スタートアップ、そして市民が有機的に繋がり、横浜発で新しいグローバルモビリティの実装モデルを生み出す共創コミュニティとして発展していく決意が示され、セッションは幕を閉じました。

左からDIMO Japan林氏、(一社)全国自動車移動連絡協議会 池上 氏、電動モビリティシステム専門職大学 准教授 ジャーナリスト・ストラテジスト川端氏

左からDIMO Japan林氏、(一社)全国自動車移動連絡協議会 池上 氏、電動モビリティシステム専門職大学 准教授 ジャーナリスト・ストラテジスト川端氏

 

次回予告とコミュニティへの参加案内

MOBILITY FUTURES NIGHT YOKOHAMAは今年度、全4回のシリーズイベントとして開催します。

◾️第2回イベント予告

  • 日時:2026年10月28日(水)19:00〜20:00
  • テーマ:「シミュレーション & ファクトリー AI」(仮)
  • 会場:TECH HUB YOKOHAMA および オンライン

◾️Physical AI Nodeのご案内
CIC Catalyst APACは、モビリティ領域にとどまらず、ロボティクスや半導体、ハードウェア等を包含する「フィジカルAI」に関連した、多様なプレイヤーが交差するオンライン・オフラインのイノベーションコミュニティを立ち上げています。本コミュニティへの参加登録は以下のフォームより受け付けております。登録された方には今後のイベント情報や、他領域(ロボティクス、先端技術)の最新動向、ネットワーキングの機会をご案内いたします。

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