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【イベントレポート】欧州と日本をつなぐ「Spanish Innovation Night」— WOZA LabsとMOA Foodtechが語る日本市場への期待とエコシステムの今

April 28, 2026

2026年4月24日、CIC Tokyoにて「Spanish Innovation Night — Europe Meets Japan」が開催されました。「SusHi Tech Tokyo 2026」にあわせて実施されたスペインの代表団による日本訪問プログラムの一環であり、AI、フードテック、サステナビリティなどの分野のスタートアップが登壇しました。本イベントは、日本と欧州のイノベーションエコシステムを直接つなぎ、新たな国際連携やビジネス機会を生み出す場となりました。

▪️CIC Tokyoが結ぶ国際的なエコシステム
イベントの冒頭では在日スペイン大使館の経済・商務アタッシェであるArturo Lanz氏から、急成長するスペインのテックエコシステムについて紹介がありました。
スペインのテックセクターは過去10年で10倍に成長しており、2025年には1,200億ユーロ規模に達する見込みであり、「スタートアップ法」の施行や、外国のパートナー企業との共同出資プログラム(FOIS)など、スペイン政府の強力な支援策が整備されており、日本企業にとっても魅力的な連携先であると言うことを説明しました。

自社のサービスの紹介するFernando Tadakuma/CDO and Co-Founder

 

▪️WOZA Labs:AIによる気候リスク予測で企業のインフラ・資産を守る
スタートアップピッチの1社目は、気候テクノロジー企業のWOZA Labs。Co-founder兼CTOのFernando Tadakuma氏が登壇し、衛星画像やIoTセンサーなどのリモートセンシングデータをAIで処理する主力製品「Predicera」について解説を行いました。

同社のソリューションは、台風や豪雨、山火事などがインフラ資産に与える影響を予測するものです。天候データの精度が担保できる「14日間の短期予測」では、影響を受ける人数などに基づいて、災害時に優先して対応すべき箇所(トリアージ)の決定を支援します。さらに「30〜50年の長期シミュレーション」では、将来の災害リスクを回避した送電線や発電所の最適な設置場所を計画し、運用費(OPEX)の削減と投資対効果(ROI)の最大化に貢献出来るということです。

Fernando氏は「企業の資産の5%が、問題の90%を引き起こすため、どこに焦点を当てるべきかが重要」などと語り、エネルギーや林業、農業分野での活用事例を紹介しました。スペインの大手エネルギー企業とも提携を進めており、日本ではコンフォートゾーンから抜け出して共にPoC(概念実証)に取り組む「勇敢な企業」との協業を求めていると呼びかけました。

Bosco Emparanza/CEOによる紹介

 

▪️MOA Foodtech:AIと発酵技術で食品副産物を高付加価値な成分へ
2社目は、バイオテック企業のMOA Foodtech。CEOのBosco Emparanza氏が登壇し、食品産業で発生する副産物を、発酵技術とAIを用いて高付加価値な機能性成分に変換する事業を紹介しました。

同社の強みは、AIプラットフォーム「Albatros」であり、微生物の代謝モデルを構築することでプロセス設計を劇的に高速化し、現在は1時間に3つのプロセスを95%以上の精度で設計可能にしています。パン粉などの副産物から作られる卵代替パウダー「Q5」は、価格高騰やアレルギー問題の解決に貢献していくと説明が行われました。
さらに、抗炎症、抗老化、脂肪吸収抑制、GABAによるストレス軽減といった効果を持つニュートラシューティカル(健康食品)への展開も進めているという説明もされました。

また、GMO(遺伝子組み換え)規制への対応についても触れ、「AIを用いて微生物の代謝経路を最適化することで、GMOを使わずに目的の成分を増やすことに成功している」と、欧州や日本での規制をクリアしやすい優位性を説明しました。同社はスイスのBuhlerやデンマークのNovonesisと協業しているほか、エネルギーコストが安く発酵技術への関心が高い日本やアジア市場への展開に大きな期待を寄せているということです。

 

▪️Q&Aセッション:日本市場での協業に向けたリアルな議論
ピッチ後のQ&Aセッションでは、両社が日本市場で事業を展開するための具体的な議論が交わされました。

日本市場に注目する理由について、Fernando氏は「昨年のSusHi Techでエネルギーやクリーンテック関連の企業が多く参加しているのを見て、自分たちのターゲットと合致すると感じました」と回答し。Bosco氏も「日本やアジアの方が発酵技術への関心が高く、日本の大企業の本社と直接交渉する方が事業をスケールできると考えました」と語りました。

WOZA Labsの予測精度について問われると、Fernando氏は短期予測で最大95%、長期シミュレーションで約87%の精度を出しているとしつつ、「日本のクライアントと協業する際には、日本の詳細な過去データを購入してモデルを微調整(キャリブレーション)し、緊密に連携しながら調整を行う必要があります」と、日本特有の災害環境への対応方針を説明しました。

MOA Foodtechの扱う素材について、レストランの「食品廃棄物」との違いを問う質問には、Bosco氏が「レストランの廃棄物はトレーサビリティがなく複雑で微生物の培養には使えません。我々が扱うのは、食品工場から出るクリーンな『副産物』です」と回答しました。
また、出資を受ける世界的なパスタ企業Barillaとの協業においては、「パスタの風味を邪魔しない無色透明で無味の成分」という厳しい基準を、徹底的なパイロットテストでクリアしたエピソードなども明かされました。

欧州スタートアップが日本で信頼を築くための教訓として、Fernando氏は「製品を買ってもらう前に、現地にオフィスなどの『存在』があることが求められます。初期投資はかかりますが、日本では一度信頼を得ると長く取引を続けてくれる傾向があるため、その努力に見合う価値があります」と話し、Bosco氏も「日本企業はイノベーションを探していますが、企業規模が大きく意思決定に時間がかかるため、何度も現地に足を運ぶ必要があります」と、長期的な関係構築の重要性を強調しました。

最後に、日本で探しているパートナー像について、Bosco氏は「機能性成分の共同開発クライアントや技術をライセンス販売してくれるパートナー、そして大量のデンプン質副産物を持つ企業」を挙げました。Fernando氏は「共にPoCを始めてくれるクライアント」とし、「日本企業との面談では、インフラ設備だけでなく保険業界など異なる視点での活用アイデアをもらい、非常に有益でした」と日本来日での手応えを語りました。

 

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ピッチおよびQ&Aセッション終了後にはイベント参加者のほか、CICの入居企業も加わったネットワーキングも行われ、登壇企業と参加者らが直接交流し、今後の連携に向けた活発な意見交換も行われました。今回の「Spanish Innovation Night」は、スペインが誇る最新のディープテック技術と日本の課題が交差する場となり、国際的なエコシステムをつなぐCIC Tokyoの役割が十二分に発揮された一夜となりました。今後の日本とスペインのさらなるイノベーション連携にご期待ください。