イベント情報

【開催レポート】スタートアップを通じた先駆者の挑戦 ─ サステナビリティを拡げるAIと人材とは ─

June 5, 2026

2026年5月27日、CIC Tokyoにて「スタートアップを通じた先駆者の挑戦 ─ サステナビリティを拡げるAIと人材とは ─」が開催されました。本イベントは、2011年に設立され、企業と社会にかかわる様々な課題を理論的・実務的な視点から考える学会である「企業と社会フォーラム(JFBS)」と、1,800名以上が参加する環境エネルギー分野のイノベーションコミュニティ「E&Eコミュニティ」の特別共催企画として実施されました。

本プログラムでは、AIとESG分野の研究者、そして脱炭素人材とメディア領域で実践を重ねる経営者をお招きし、「サステナビリティ・イノベーション・エコシステムの構築」をテーマに議論が行われました。AIのガバナンスや人権という倫理的な視点と、それを支え実装する脱炭素人材の育成、さらに気候変動メディアの役割など、多様な観点からサステナビリティの最前線が共有されました。

 

環境エネルギー分野におけるスタートアップ、大企業、投資家、研究機関、行政機関など多様なステークホルダーをつなぐ場を提供するCIC TokyoおよびE&Eコミュニティにとって、本イベントは多様なプレイヤーが交差して協働のきっかけを生み出す有意義な機会となりました。


▪️イベント概要

  • 開催日: 2026年5月27日(水) 18:00〜20:00
  • 会場: CIC Tokyo Nijiセミナールーム およびオンライン
  • 共催: 企業と社会フォーラム(JFBS)、CIC Japan / E&Eコミュニティ
  • テーマ: サステナビリティ・イノベーション・エコシステムの構築
  • 主な登壇領域: AIとESG、人権、脱炭素人材、気候変動メディア、環境エネルギーイノベーション

▪️イベントの流れ

本イベントは、CIC TokyoのNijiセミナールームおよびオンライン配信のハイブリッド形式で進行しました。まず開会にあたり、E&Eコミュニティ事務局・CIC後藤よりE&Eコミュニティのご紹介と開催趣旨の説明がありました。続いて今津秀紀氏よりJFBSの紹介が行われました。その後、ニーナ・ジダノビチ氏による特別講演、井口和宏氏と市川裕康氏による対談が実施されました。プログラム後半では、岩田紘宜氏のモデレーションのもとパネルディスカッションが行われ、最後に福川恭子氏の閉会挨拶をもってセッションが締めくくられました。セッション終了後は、現地参加者限定のネットワーキングが行われました。

▪️オープニング:JFBS(Japan Forum of Business and Society)の紹介

冒頭では、JFBSプログラム委員長でありサステナビリティを軸にしたコーポレートコミュニケーションの専門家である今津秀紀氏より、JFBSの紹介がありました。JFBSは企業と社会にかかわる課題を理論的・実務的な視点から考える学会として2011年に設立され、サステナビリティ分野における日本初の学会として活動を展開していることが共有されました。

▪️特別講演:人権の視点から考えるAIガバナンスとサステナブルビジネス

登壇者: ニーナ・ジダノビチ 氏 / aiESG, Inc. Senior Specialist in Human Rights & ESG Disclosures / Keio University Assistant Professor in AI Ethics

 

特別講演では、AI、人権、社会的サステナビリティの交差点で研究と実務を行うニーナ・ジダノビチ氏より、AI技術が社会にもたらす影響について語られました。ニーナ氏は、人権リスク評価(HRRA)や社会的インパクト評価(SIA)などのアプローチを通じて、公平な意思決定を支援する活動を行っています。 講演では、顔認証などのコンピュータビジョン技術を例に挙げ、店舗での誤認逮捕による人権侵害を引き起こす可能性がある一方で、森林伐採や生物多様性リスクの特定といった地球環境の保護に貢献する側面もあることが指摘されました。ニーナ氏は、「技術は全く一緒ですが、使い方と未来はものすごく異なります。どんな社会でどんなテクノロジーを作っていけばいいのか、という点をみんなで考えようというのがメッセージです」と語り、同じ技術であっても社会実装のあり方によって未来が大きく変わるという示唆を示しました。AIガバナンスにおいて技術そのものだけでなく、社会的影響、倫理、人権、意思決定プロセスを考える必要性が共有され、AIをどのように社会に実装していくかを改めて問い直す講演となりました。

▪️人材とメディアが拓く日本の環境エネルギーイノベーション

登壇者: 井口和宏 氏 / グリーンタレントハブ株式会社 代表取締役 市川裕康 氏 / 株式会社ソーシャルカンパニー 代表取締役・ニュースレター「Climate Curation」運営

続いての登壇(対談)では、井口氏と市川氏による人材とメディアの観点から議論が展開されました。脱炭素領域で圧倒的に人材が不足していることに課題意識を持ちグリーンタレントハブを創業した井口氏からは、人材不足の深刻さについてデータを用いた説明がありました。GX(グリーントランスフォーメーション)関連の求人が急増している一方で、転職者数が追いついていない現状が示され、「需要に対して供給が足りていないという意味でのギャップが起きています。他の業界から積極的に参入してほしいという状況です」と呼びかけました。特にスタートアップでは、CXO候補や事業部長クラス、電気エンジニアなどの専門人材が強く求められていることが共有されました。

また、国内外のデジタルメディア動向に精通し、延べ約5,000人の購読者を持つ無料ニュースレターを配信する市川氏からは、海外の気候テックや脱炭素に関する情報を日本語で発信する活動を通じて見えてきたトレンドが共有されました。気候変動・脱炭素・気候テック領域における国内外の情報ギャップを埋める取り組みや、データセンターの電力需要急増に伴うエネルギー問題がグローバルで大きな議論となっている点に触れられ、メディアや情報発信が環境エネルギー分野のイノベーション理解を広げる役割を持つことが示されました。

▪️パネルディスカッション:企業とサステナビリティの交差点

モデレータ: 岩田紘宜 氏 / 慶應義塾大学ディープテック・スタートアップ研究センター 研究統括ディレクター

 

気候・エネルギーイノベーション研究を専門とする岩田氏のモデレーションによるパネルディスカッションでは、AIの発展に伴う電力需要の増加や、ディープテックスタートアップにおける人材育成について活発な議論が交わされました。 会場からの「大学発スタートアップの幹部人材をどのように育成するか」という問いに対し、井口氏は「ポータブルスキル(商社やコンサルでの事業開発経験など)を持つ人材に、グリーンスキル(技術特性の理解)をリスキリングで付加することが現実的です。座学だけで即戦力の幹部を育成するのはまだ難しい現状があります」と回答し、実務経験者へのリスキリングの有効性が示されました。 また、日本のエネルギー戦略に関する質問に対しては、アメリカのビッグテック企業がデータセンターやエネルギーに巨額の投資を行っている現状と比較し、電源構成(再エネ、原子力、火力など)の課題も含めて、日本がどのようにキャッチアップしていくべきかについて議論が行われました。サステナビリティの領域では多角的な視点から問い直す場となりました。

▪️クロージングとネットワーキング

プログラムの終盤には、消費者倫理やAIと消費者の相互作用における倫理的課題の研究を専門とする、JFBS会長の福川氏が登壇し、イベント全体を総括しました。福川氏は、「サステナビリティにおいて規範が日々変わっていく中で、何が正しいのかという固定的なものを求めるのではなく、その瞬間瞬間に道徳的な判断を求められたときに、そのプロセスに真剣にエンゲージメントしていくことが重要です」と語り、倫理的判断に向き合う姿勢の重要性を強調しました。 その後、現地参加者限定のネットワーキングにて、参加者同士が交流する時間が設けられました。

▪️イベントの意義と総括

本イベントは、AIのガバナンスから環境エネルギー分野の人材育成、そしてメディアを通じたグローバルトレンドの把握まで、AI、ESG、人権、脱炭素人材、メディアという複数の観点からサステナビリティを捉え直す貴重な機会となりました。技術の進化がもたらす光と影を理解し、それを適切に社会実装していくための「人材」と「倫理的判断」の重要性が改めて浮き彫りになりました。

 

環境エネルギー領域におけるイノベーションには、研究者、大企業、スタートアップ、行政、投資家、メディアなど、多様なプレイヤーの接続が必要不可欠です。本イベントを通じ、CIC TokyoおよびE&Eコミュニティが、こうした多様なステークホルダーが交差し、新たな協働のきっかけを生む場として機能していることが示されました。虎ノ門ヒルズに計6,000平米のスペースを有し、300社以上の入居企業と年間400以上のイベントを開催するCIC Tokyoの環境は、まさに有望なスタートアップの成長を支える基盤となっています。

CIC Tokyoは今後も、環境エネルギー分野におけるイノベーション創出を後押しするとともに、多様なプレイヤーが出会い、学び、協働するコミュニティづくりに取り組んでまいります。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

E&Eコミュニティの概要はこちらからご覧いただけます。

みなさまには是非積極的にE&Eコミュニティへご参加いただき、一緒に盛り上げていけると嬉しいです!

E&Eコミュニティ参加登録フォーム(無料でご参加いただけます)】